Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    hota_kashima

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 28

    hota_kashima

    ☆quiet follow

    現パロ塚橋に預けられた赤ん坊の私…な話

    「ほぎゃぁー!」

    …え?なにこの声。私の喉から出たの!?

    「ぶきゃぁぁぁーー!」

    視界がぼやけてる。でも、誰かに抱っこされてるのはわかる。

    手足を思い切り動かしてみても、全然言うことをきかない。
    確か、昨夜は自室の布団で寝たはずなのに――なんで赤ん坊になってるの!?

    混乱していたら、さらに大きな声が出てしまった。

    「ぎゃぁぁーーー!!」



    「あはっ、元気な子ですね。オムツかな?ミルクかな?」

    ちょっと失礼しますねと、私を抱いていた人からその声の主に抱き抱えられると、ふかふかした何かの上に寝かされる。

    手際よくオムツを剥がされチェックされたかと思うと、「取りかえよっか」と顔を覗き込まれた。

    …ヒュッ。

    思わず喉が鳴った。その顔、まさか―

    昨夜、寝る直前まで読んでいた『蛍火艶夜』に出てくる塚本太郎じゃない!?
    ええぇぇぇ!?!?“タロちゃん”が目の前に!?!?なんで!?

    硬直していると、タロちゃんが言った。

    「あれ、急におとなしくなった。今のうちに…っと」

    足を掴まれ腰を高く持ち上げられた時だった。

    「塚本、お尻拭きにカイロ貼ってるのは何なんだ?」

    新たな声にそっちを向く。視界はまだぼやけてるけど、釣り上がった短い眉に垂れた目―これって、もしかして和さん!?

    私…塚橋の現パロ世界に来ちゃったってこと!?

    「お尻拭きウォーマーがないから代用にしてみました。今日みたいに寒いと冷たいお尻拭きで泣く子も多くて。五郎もそうだったんですよ」

    タロちゃんに、あったかいものでお尻を拭かれ、さらさらのオムツに交換される。
    …くぅ、心地よい…

    「へぇ…こんな赤ん坊にも心配りが必要なんだな」

    「喋れないからこそですよ。よし、オムツはOK。ミルク作ってきますね」

    そう言うと、タロちゃんは立ち上がり気配が遠のいていく。

    「いいな、お前は。塚本にあんなに世話してもらえて」

    そう呟いて、和さんが私の頬をつつく。

    …ごめんなさい和さん。あなたのタロちゃんに世話させてしまって。…なんて考えていると
    …ん?なんか手が勝手に何かを掴んでる?

    あっ、私の手、動くのね?無意識だったんだけど…なんて思っていたら、

    「塚本!赤ん坊が俺の指を握った!どうすればいい!!」

    ―和さん、声でっか。

    あぁ、これ、和さんの指でしたか、すみません。私の意思ではないんです…

    「あはは、それ反射です。せっかくだし仲良くしてあげてくださいよ。和さんの姪っ子さんなんですし」

    えっ、私、和さんの姪なの!?
    衝撃的事実にフリーズしていたら、ふわっと抱き上げられた。

    部屋の明かりが眩しい。顔を背けようともがいていたら、柔らかい何かが頬から口元に触れる。

    しかも、いい匂い…!男の人の香りと、甘さが混じってて、ドキドキしてきた。

    ―が、突然。

    自分の意思とは関係なく、首が勝手に左右に動き出し、口がパクパクと動き出した。

    「なっ、なんだ!?何があった!?」

    …っ私もわからないの!和さんごめんなさい!体が勝手に反応しちゃって!

    まるで、乳を探す赤ん坊のよう…いや、私今赤ん坊なんだけど。

    すると唇に何か突起が触れる。その瞬間、意思に反して動く体がそこに吸い付いた。

    「んっ!!や、やめろ!つっ!塚本ぉ〜〜!!」

    …え。何に吸い付いてるの私!?この突起って、まさか和さんの…

    …と考えた瞬間、誰かに抱き直された。

    「お腹が空いてると、反射で口に触れたものに吸い付くんです。こうやって哺乳瓶を…」

    チョンチョンと口の横に濡れた何かが触れる。すると自然とそれに口が吸い付いた。
    甘くて温かいミルクが喉を流れる。

    「和さん、服が涎まみれです。俺がミルクあげてるので、着替えてきてください」

    「わ、わかった」

    (和さんごめんなさい…)

    ミルクを飲みながら、タロちゃんの腕の中でほっとしていた。

    「ふふ…和さんと同じ眉と目元だ…」

    その声はどこか愛おしげで、聞いているだけで幸せな気持ちになる。
    柔らかな空気のもと、甘いミルクをゴクゴクと飲むとだんだんとお腹がいっぱいになってきた…
    もう、飲むのやめようかな…

    …なんて思った、その時、気づいた。

    タロちゃん…ちょっと臭い。オイルのような匂いがタロちゃんに抱かれているとどこからか漂う。ミルクを飲んでいてもまるで機械油を飲んでいる気分だ…

    やっぱり、抱かれるなら和さんがいいかな……おっぱい柔らかかったし…なんて思っていると

    「もう終わりかな?」とタロちゃんの声が降ってくる。

    (あっ、口、止まってた?ごめんなさい。もう飲みたい気分じゃなくなっちゃって…)

    赤ん坊の姿に慣れてきたのか、思考もどんどん赤ちゃん寄りになってきているようだ。

    すると、タロちゃんの肩に顎を乗せられ、背中をトントンと叩かれる。

    「げっぷしようね〜」

    ゆらゆら、トントン。あぁ、眠い……
    お腹がいっぱいの時にこれは落ちること間違いない…
    うとうとと微睡んでいると…

    「ん〜、ゲップしないまま寝ちゃだめだよ〜」

    …と、足の裏をくすぐられ、ハッと目が開いた。

    (タロちゃん結構、スパルタなのね?)


    その時、和さんの声が聞こえる。

    「変わる。そう抱いて、背中を叩けばいいんだな?」

    「あ、いいですか?哺乳瓶洗ってくるんで、お願いします!ゲップする前に寝そうになったら、足の裏さすって起こしてください。ゲップさせないと寝ながら吐くことあるので窒息が怖くて…」

    「わかった」

    和さんはそう言うと、私を受け取り肩に抱えた。

    …やっぱこの匂い、好きかも。男らしさと優しさが混じった香り…

    とうっとりしていた、その時だった。

    ドンドンドンドン!!!

    く、苦しい!??

    思い通りに動かない首の代わりに、目だけ横に動かすと―

    …小鼓でも打ってるのかってくらい、早く、力強く私の背中を叩く和さんの横顔。

    チェンジ!チェンジで!!オイル臭いとか思ってごめんなさい!!タロちゃん!!
    そう思っても声なんて出るわけがない。
    和さん!!つつよい、つよいいい…!!あ、これ志津摩のセリフだった。
    カムバック!タロちゃん!!と強く念じた時だった。

    「ぎゃーー!!」

    あ、やっと声が出た。

    「ぎゃぁぁあああ!!!」

    あれ、声止まらない!?
    タロちゃん気がついて来てくれるからもう声止まっていいよ?

    「なっ、どうした??」

    ほら和さんもびっくりしてる

    「ぎゃああああ!!!ンゴォッオオオオ!!」

    え?喉からなんか出てる??

    「つ、塚本ぉー!吐いた!吐いたぞ!!」

    え!?私、吐いたの!?いやそりゃあんだけポンポコ叩かれたら、何かしら出るって…

    全部出し終えたころには、胸の苦しさもすーっと消えて、意識が微睡に沈んでいく―

    和さんから漂っていたいい匂いは、ミルクと胃液の匂いに変わっていた。





    ―ピピピピピピピ

    「ンゴっ…あれ?」

    アラームが鳴っている。どうやらソファで寝落ちしていたらしい。

    テーブルの上には、昨夜飲んでいたストゼロの缶。視界の端に―

    …吐いた跡。

    「…うわ、最悪。寝ゲロしてるし…」

    ギリ窒息しなくて良かった…

    慌ててソファカバーを剥がし、洗濯機にぶち込み、自分もゲロまみれの髪を洗いに風呂場へ。

    シャワーの中、思い返すのは夢の中の出来事。

    (タロちゃん手際良かったし、和さんいい匂いするし…最高だったな…)

    苦い現実のゲロを洗い流しながら、私はそんなことを思っていた。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺🍼👶👶👶👶👶👶👶👶🍼🍼🍼
    Let's send reactions!
    Replies from the creator