砂浜にて砂浜にて(鍾タル+旅人) @ruauiue
ザザァン——
潮の香りに満ちた風が吹きすさび、遠慮のない陽光が降り注ぐ。足元は焼かれた砂から立ち上る熱気で僅かに熱い。渡り鳥の鳴き声が遠くから届く。
「海だねえ」
「海だな……」
岩の上に腰掛けつつ暇を持て余し、独り言を言ったつもりの青年は、応えるような声が右後方から聞こえてきたので思わずそちらを見た。振り返れば、目に痛いほど眩く光を反射する砂には到底似合わぬ、黒い出で立ちをした男がしかめ面で立っていた。その男越しに視界に映った水平線上には、突き出した岩が点在しているのが見える。
「やあ鍾離先生。先生も相棒に呼ばれてきたの?」
「こんにちは公子殿。旅人のことか。ああ、探索に付き合ってもらいたいから現地で合流しよう、と、三日前に」
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