さくらちゃんのはなし ─────嗚呼、あの日。
「見てみたいとは、思わないか?」
あの日、止まればよかった。
「響子、お前と」
願ってしまった。
「ゆめと」
夢を見てしまった。
「そしてオレとで」
胸が、高鳴ってしまった。
「この世の、最上の景色を!」
あの手を、掴んでしまった。
……自分なんぞが、並び立てると、思ってしまった。
彼らと違って、私にはなにもないのに。
これは私の罪。私の後悔。私の懺悔。
届かない星に手を伸ばして、夢やぶれて、墜ちた。
翼がないのなら跳べばいい。努力は決して無駄にはならない。いつかはきっと、手が届くはず。ずっとそうしてきた。今までもこれからも、そうだと思っていた。
……でも。翼のある人々と、二本の足を不格好に動かすしかない、凡百の徒である自分とでは、生きる世界が違った。見る景色が違った。埋めようのない距離。差し伸べられた手は遠く、手を重ねることすらできない。
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