ngi夢布団の中で寝返りを打つたびに、シーツの音が耳につく。
目を閉じても、まぶたの裏に余計なことばかり浮かんできて、眠れない。
「まだ寝てないのか」
唐突に聞こえた声に、びくっと体が跳ねた。
暗がりの中、部屋の隅に圭くんが立っていた。
「…圭くん。まだ起きてたの?」
「そっちがあんまりゴソゴソうるさいから。さっさと寝ろよ、寝るまでいるから」
壁に背を預けたまま、彼は腕を組んでこちらを見下ろしている。いつもの無表情。
「……もうちょっとそばにいてほしい」
「は?」
「眠れない」
しばらくの沈黙のあと、ため息がひとつ落ちた。
「子供かよ…」
そう言いながら、彼はベッドの横に腰を下ろす。
触れるか触れないかの距離で、何も言わずにじっとしている。
「なにか話してくれない?」
「僕、寝かしつけ役じゃないんだけど」
「知ってるけど……」
「……」
少しして、彼が小さく呟く。
「…脳の活動を抑えるには、深呼吸と一定のリズムを意識するのが有効らしい。試せば」
ぶっきらぼうに言いながら、彼の指が枕元でトン、トン、と軽くリズムを刻みはじめる。
それに合わせて息を吸って、吐いて。
「ねえ、圭くん」
「寝ろ」
「寝たら、帰っちゃう?」
「寝るまでいるって言っただろ。言わせんな」
それ以上はもうなにも言わず、彼はただそばにいた。
眠気がようやくまぶたを重くしていく。
静かな夜の中、彼の指先が枕を軽く叩く音だけが、やさしく響いていた。