負け犬たち「十二少、廟街へ帰れよ」
冗談言うなと返したが、信一は「なんでだよ」と唇を尖らせ、横を向いた。
俯いた信一は、長く、うざったい前髪が額にかかり、なんだかその横顔を幼くしていた。きつく唇を結び、不貞腐れているように見える。俺は知っている、それは泣き出しそうな時の顔だ。
「腑抜けてんなよ」
俺は動く方の足で、信一の脛を蹴飛ばした。俺の方を向かない横顔の、その先では日が暮れかかっていた。
俺は右足が駄目になった。信一は右手の指が二本になって、自慢の顔にも傷が入った。どちらがマシかと考えるのは馬鹿らしい、どっちも最悪だった。男前が上がったなと揶揄うと、信一は「ああ」と答えたが、大好きだった鏡を見るのをやめてしまった。
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