おもしろくない。とてもおもしろくない。
この本丸で1番練度の高い明石はここ最近ずっと出陣続き。そこに期日が短い仕事を多量にこなさなければならなかった審神者の多忙も重なり、ほとんど一緒に過ごす時間が取れなかった。
それがようやく落ち着き、「主さんと過ごしてきな」と愛染と蛍丸に見送られ久しぶりに審神者の部屋を訪れた明石を共に出迎えたもの。それは。
「可愛いでしょう?仕事頑張ったご褒美に買ったんです!」
きゃあきゃあ嬉しそうな笑顔の審神者の腕の中にいたのは黒いふわふわもふもふのウサギのぬいぐるみ。
刀剣男士をモチーフとしたウサギのぬいぐるみが発売されており、「明石さんのも早く出ないかな」と審神者が言ったのは覚えていた。彼女の両腕に抱きかかえられたぬいぐるみはその自分モチーフのウサギ。
おもしろくない。とてもおもしろくない。物なのに、モノに少し嫉妬している自分も。
「可愛いですけど、ぬいぐるみやなくて本物が目の前におるのになあ?ウサギは構ってもらえんと死んでしまう言いますが」
審神者の腕からぬいぐるみを取ると、机の上に置く。
「本物のこっちも構ってもらえんと寂しくて死んでしまいますわ」
空いた彼女の腕を自分に回させ抱きしめてから顔を近づけようとして、
「おっと、あんさんには見せられませんな」
と小さく呟き、目が合ったウサギに自分たちが見えないよう反対に向けた。