百神っていう、冒険者である主人公が封印された神様や物語などの伝説の人物(日本含めた世界各地の神話の神、アーサー王伝説関係、西遊記、ケルトの魔女や妖精伝承など)を解放していくというゲームの、ギリシャの死神タナトス×人間の女性冒険者(※公式では冒険者という以外の設定なし)で書いてました。
ここにあるの全部そのCPです、タナ主♀って言ってた。
◆<最中の好きとか愛してるとかって一番信用ならんらしいので、それを逆手に、本心なのに普通じゃ言えないから、最中にわざと言って嘘でもいいから主♀からも好きって聞きたいタナトスな、せふれなタナ主♀>
わかっている。いつも蕩けた表情でアイツから返ってくる「私も、好きです、」はその場に酔っているせいだと。こういう時の「愛してる」 や「好きだ」は、一番信用ならない。それをわかっていてわざと言う自分と、嘘でもいいからアイツからの私もです、という言葉を聞きたい自分と。
いつかちゃんと、真っ当に伝えられたらと思いながら、今日も嘘であって嘘でない言葉を繰り返す。ーーその「いつか」は、アイツの一生が閉じてからもきっと訪れることはないのだろう。今日も行為のあと眠ってしまったアイツの髪や肌にそっと触れながら届かない言葉を繰り返す。「ーー愛している」
<↑の、主♀サイド>
わかっている。最中のタナトス様からの「愛してる」は、儀礼みたいなものだと、決して本心ではないと。抱いてくださいと言い出したのは私から、優しいこの方は「それがお前の望みなら」と、願いを聞いてくださっただけ。神が人間の願いを聞き届け、叶える。死神であっても例外はない、と。
そのたびに返す言葉も儀礼みたいなものだと思われているのだろう。でも、それでいい。自分を見てくれるのならばもう何でも。こういう時でないと神に面と向かって好きだなんて言えないのだから。 神に自分だけを見てほしいなんて、何て罪深い。そして今日も繰り返す「私も、好きです」の言葉。
(2013 2/12)
◆やっぱり、苦いし苦手だ。前に守護神様に「飲めないのは味覚がお子様なのな」とからかい半分に言われ、「人間が神様に比べたらお子様なのは当たり前です、時間が違うんですから」などと斜め上の答え方をしてしまい。今日、その守護神様が留守の間にこうして自分で淹れて飲んでみたのだけれど。
この濃い焦げ茶色の苦い飲み物はやはりどうやら私の敵のようだ。この飲み物にしてみれば勝手に敵にされて迷惑だろうけれど。守護神様の味覚に近付きたいと思ってまた飲んでみたけど、やっぱり苦いし苦手だ。きっともうすぐ帰ってくる守護神様は私がこれを飲んでいるのを見てまた笑うのだろう。
それでもようやくあと一口ほどになった液体を一気に流し込む。「…やっぱり、苦い」
(2013 3/18)
◆気を張っていたところに自分以外の誰かがいることで安心したのだろう。さっきまでの怯えた様子が嘘のように、自分の傍らで安らかに寝息を立てている少女にタナトスは小さく嘆息する。
「……俺が、寝れねぇ……」
窓の外からはもう鋭い音や光はなく、ぽつんぽつんと水音がするだけ。
「おやすみ、良い夢を」
そう呟いて少女の額に軽く口づける。恐怖や苦痛を伴う眠りを司る自分が、安らかな眠りを、なんて。しかも人間相手に。自然にそんな言葉が出てきた自分が自分でおかしくて、タナトスは自嘲する。石に囚われていたのを解かれたと思ったら、次はいつのまにか人間の少女に囚われていた、という話。
(2013 5/25 キスの日の話 雷が苦手な主♀が、朝まで安らかに眠れるようにという祝福=額へのキス:祝福 死神の祝福という厨二なあれ)
◆<タナトス×主♀前提 ハデスとタナトスのマイペ会話から妄想した死神兄妹の会話>
「まったく、どの口が言うのかしら、"お兄様"?」
妹が自分をこう呼ぶ時は、何か特に言いたいことがある時だ。
「…何が言いたい?」
わかっていて、聞き返してみる。
「あら、わからないの?よっぽどね。主(あるじ)にあれだけ言っておいて、自分はしてないじゃない。」
「…何のことだ」
久しぶりに再会した、自分と妹の上司に当たる冥府の王に挨拶をし、部屋を出るとすぐそこに何か言いたそうな妹が立っていた。そしてこの投げ掛けだ。このままではらちが明かない。
「本当にわからないの?…今は守護神にって言ってくれてるけど、しっかり捕まえておかないと他のところに行っちゃうかもしれないわよ~。守護神=ずっと側に、じゃないのよ。あの子はこれからもいろんな神に会うんだから。…やだ私ったら喋りすぎたわ~。親切がすぎたわね~、私が言いたいのはそれだけよ~。」
真面目な顔から一気にいつもの調子に戻った妹は、服の裾を翻し、去っていく。こっちには何も言わせず、本当に言いたいことだけ言って。
「…それができりゃ苦労してねぇよ…」
もうはるか遠くになった妹の背中を見つめながら、タナトスは独りごちる。あの子…タナトスや妹のヒュプノス、つい先日自分たちの主に当たるハデスやペルセポネをはじめ世界の封印された神々を解放する旅をしている冒険者の少女。守護神として行動を共にする事が多くなっていく中で、いつしか少女に惹かれている自分に気が付いた。
少女は人間、自分は神、しかも神々の中でも排されがちな、恐怖と苦痛を司る死神。気付いてはいけないと圧し殺してきたつもりだったが、あくまでつもりになっているだけだった。
一言「ずっと側にいてくれ」と言えたらどれだけいいか。
妹は気楽に言ってくれたが(もちろん態度は気楽ではなかったが)、言えていたらこんなに苦労なんかしていない。先ほど主に言った「気に入ったヤツを側に置いておけばいい、我慢はよくない」という言葉は殆ど自分にも言い聞かせているようなものだった。とんだお笑い草だ。 いつか少女に告げられる日がという苦悩の日々は永遠に続くのだろう。少女の一番近くにいるというのに。
(2013 5/26)
◆<タナトス×主♀>
少女は思う。滑稽だ、本当に滑稽だ。そしてふとわいた問いは、飲みこんだ。
冬の夜の空は空気が澄んでいる分、美しい。よく見える日はしゃらしゃらという星の煌めく音まで聞こえてきそうだ。そしてそれを引き立てるかのようにギリシャエリアの夜は静かだ。特に今日は。
平原は風が草や木々を時折なでる音しか聞こえないし、ギリシャ神殿に至っては、かなり高い場所にあるのに海の波の音まで聞こえそうな。神殿は夜に限らず昼間もしんとしているけれど。
そんな夜のギリシャ神殿の石畳に、少女はタナトスと並んで座り、星を眺めていた。建っている場所と同じくするように天井は相当に高く、空を見るために首を上げても、視界に天井は入らない。
「……流れ星、見えませんね」
「そのうち見えるんじゃねえか?」
さっきから何か会話をする訳でもなく、問答のようで問答になっていないこんなやりとりを繰り返している。流星群が見える日だというので、ここならたくさん観察できるかもしれないと、少女が頼んだのだ。最初は一人で見るという少女に、夜だし人間を一人で神殿に上げられないとタナトスが同行するというのが条件だったが。
もう何回目かわからない「見えない」を少女が発しようとしたとき、視界の端に流れる白く淡い光が一瞬、動く。
そこでふと少女は思う。神の仕事は人の願い、思いを聞き届け、もちろん全てとはいかないれど、叶えること。では、神が何かを願った時、願いを叶えるのは、いったい誰なのか。やはり同じく神なのか。それともまさか人なのか。――そもそも、まず神が何かを願ったりするのか。神は人の特別な願いをも叶えるほどの強力な力を持つから神なのであって、人にそんな特別な力はない。
こんな問い、隣に座っている神に聞けるはずもなかった。タナトスは、死を司る神。自嘲気味に、人間には嫌われているくらいでちょうどいいさ、などと言うこの神には。そしてそんな神に許されざる想いを抱いてしまった自分には。だいたい、神が隣にいるのに星に願いをなんて、自分の想いも含め、滑稽すぎる、本当に滑稽だ。
「さっきの流れ星、見えたか?」
タナトスの言葉に、少女ははっと我に返る。
「あ、はい、やっと見えましたね」
「流れ星に願いをすると叶うとか人間の間では言うらしいな。お前、何か願いとかあるのか?」
この願いは、誰にも言える訳がない。願わくば自分の死を迎えに来るのはタナトス以外でいてほしいなどと。タナトスが司るのは、死の中でも、苦痛・恐怖の死。自分はこの想いをきっと死の瞬間まで引きずるだろうと思う。想いは秘めたままにすると決めている。何かの想いを引きずったままの死も苦痛の死に入るのならば、迎えに来るのは彼の役目。死んでから想いを告げることになるかもしれないなどと、これも滑稽にすぎる。第一、困らせるだけだ。
「特に、ないです」
「……そうか。俺は死の神だから良い方向の願いなんてそんなに叶えてやれないかもしれないが、何かあったら、まあ、言ってみろ。考えてみてやるよ」
――それならば。
「それじゃあ……あの、ちょっと寒くなってきたので、その……よかったら、私の手を温めてくれますか?」
少し言いにくそうに、しかしはっきりと告げる。
星に願いを、この言ってはいけない想いが届きますようになんて大それたことはいわない、でも、これくらいならば、許されるだろうか。