焼くは嫉妬、焦がすは想い 蝉の声が煩くて、日差しが痛い。炎天下の中を薫さんと二人で歩きながら、あたしは溜息を吐いた。その溜息すらも熱い気がして嫌になる。暑いっていうか熱い、もう。
「……あっついね」
「今日は猛暑日だと言っていたね」
「その割には薫さん、涼しい顔してるけど」
「そう見えるだけさ。こんな日に付き合わせてすまなかったね」
大丈夫ですよ、とあたしは首を振る。夏休みの真っ只中、弦を買いたいと言う薫さんに誘われて一緒に楽器店へ向かっている途中だった。夕方からはバンド練習があるので、その前に行っておきたいらしい。
「薫さんに結構難しいパート当てちゃったからね……。昨日の時点で結構形になってたから、沢山練習したでしょ」
「ふふ、美咲が私のことを信用してあのパートを任せてくれたのだと思うと、嬉しいよ」
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