PTSD 汗が目に入って痛みに顔を顰めた。両手は鉄の塊みたいな重さの銃剣を握っているため拭うことが出来ない。
いつもなら眉を動かしただけで平手が飛んでくるものだが、今日ばかりは違った。
「我々はこれまで奮闘をしてきた。だがあと一歩のところで、敵の卑劣な作戦により追い込まれている」
上官の重苦しく語る訓示。周りの沈鬱な表情と雰囲気に誰もがこの後に続く命令を理解していた。
「苦渋の決断ではあるが我らはこの命をお国と陛下のため捧げると祖国を出たのだ……。ならば最期まで恥を捨て、敵の1人でも多く道連れにし華々しく散ろうではないか!」
身勝手でうるさくて暴力的な上官がこの時ばかりは涙を流した。それに呼応し何人かの鼻をすする音が聞こえる。
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