可視光線透過率18ですよ?いくら魔法で常にドンパチやってるような世界だろうと18の子供がそんなすぐにドデケエ器用意できるかって思っちゃうんですよ。しかも相手は『天才』『実兄』『役職持ち』『規律の鬼』ですよ?しかも家庭環境は劣悪ときたもんだ。ムリでしょうよ。だめだよワースくん病んじゃう。
本当に悪気も否定する気もドンパチやる気もないんです。許してください。
相手を否定しているのは、どちらだ
その言葉を聞いて、パキリと音が響いた。
確かに自分の中にある『弟に興味のない冷徹は砂の神杖』を押し付けていたのだと理解した。理解は、した。だがそれを改められるほど溝は浅くはないし、己に蔓延る強迫観念は弱くない。
なにより、思考と感情を切り離せるほどオレは上手く生きてこれていない。
割れた音は終わらない。
「もう、し訳ありません」
「それは俺に言うべきではないだろう。それともキミ達兄弟間のことにオレを巻き込んだことに対する謝罪か?」
何も言えない俺に光の神杖は一つ、息を吐いて先入観は捨てるべきだ、と言葉を残して去っていく。
悪いクセだった。
どれだけ相手に非があろうと、自身の考えを口に出して対話をするべき場面だろうと、何も言わない。もちろん、それが推奨されないことはわかっている。それでも劣悪な環境で育った俺は、無意識に事なかれ主義となっていた。今までの学生生活で喧嘩はもちろんしてきた。それでもいつもどこか諦めていた。
だから、今も諦めた
悪い癖だ。
言わない選択をしたのは自分なのに、グルグルと頭と腹を食い散らかす言葉を奥歯で噛み殺す。そしてそれを被害妄想に転換し一人ひねた考えに浸る。わかっている。家において発言権の一切がなかった故の自己防衛であることも、話が続いた時に己が発言するためのタメであることも、わかっている。分かっているが、咄嗟に黙るのはやはり逃避なのだ。
今も、奥歯が軋む。
ウチの教育を受けてから言えってんだ。身内に自分以上の圧倒的テンサイどころか兄弟すらいないアンタにはわかるわけが無い。身近に比較対象が居ないっていいよな。強迫観念に迫られたことあるか?鍛錬しただけで罰を与えられたことはあるか。己の人格を物心ついた瞬間から否定されたことはるか。行き過ぎた折檻を受けたことはあるか。兄を引き合いに行動を制限されたことはあるか。明らかな体調異常よりも勉学を優先されたことはあるか。幼少より
耐性を付けさせられたことはあるか。たった一人の行動で己の全てを否定されたことはあるか。
まとまらない反論というには稚拙で幼稚な衝動は、ギリと鳴く奥歯に潰される。
ーーーこれ以上はダメだ
止まらない破裂音に思考を止める。
どうせ、理解など、
そうしてまた、透過率は下がる。