『日の下を、二人で』夜の森は静寂に包まれ、月光が木々の隙間を縫って地面に銀の模様を描いていた。東堂は、闇に溶け込むような黒いマントを翻し、獲物を求めて古びた屋敷の周辺を彷徨っていた。吸血鬼の彼にとって、夜は狩りの時間だ。鋭い感覚が、近くに漂う甘い血の匂いを捉えた。
「ふむ、美女の香りか?」東堂は唇を吊り上げ、屋敷の窓辺に忍び寄る。そこには、長い緑髪を月光に輝かせ、ベッドに横たわる人影があった。白い肌、華奢な体躯。東堂の赤い瞳が妖しく光る。「これは…極上の獲物だな!」
一瞬にして窓を越え、ベッドの脇に立つ。だが、近づいた瞬間、獲物の声が響いた。
「…誰、ショ?」
低く、かすかに掠れた声。東堂は一瞬硬直した。…男? 獲物の顔をよく見ると、確かにそれは女性ではなく、病弱そうな青年だった。鋭い目つき、緑の髪が乱雑に額にかかるその姿は、どこか野生的な美しさを持っていた。
2390