『何気ない日常』〜付き合ってからの2人〜 眩しい朝の光が窓から差し込んできている。キッチンからはパンの小麦の匂いとベーコンエッグの香りが漂ってきて、食欲を掻き立てる。御影玲王は読んでいた新聞紙をテーブルに置き、立ち上がりキッチンへと行く。
「なんか手伝うことあるか?」
「大丈夫だよ、れー君はあっちで待ってて」
自分があげたエプロンを制服の上から身につけ、優しく微笑んでくるのは皇水希。玲王の彼女だ。新婚の朝みたいだなー、と思いながら彼女が持っている皿を持ち、運ぶ。
「ちょ、本当に大丈夫だって!」
「いいんだよ、俺がしたいんだし。なら、水希はコーヒー淹れてくれよ」
お前の淹れるコーヒー、好きなんだ。そう言うと水希は分かったと頷き、キッチンへと戻った。
「お待たせ」
「そんな待ってねぇよ。んー、いい香りだな。そんじゃ、食べますか!」
「「いただきます」」
こんがりきつね色に焼かれた食パンとベーコンエッグを共に食べ、コーヒーを飲む。どれも温かく、なにより水希が作ってくれたからなのか、シェフが作ってくれたものを一人で食べていたあの頃とは違く、とても美味しい。
「めっちゃうめぇ…やっぱ水希の手料理すごく好きだわ」
「そんなに凄いもの作ったつもりは無いんだけど…そう言ってくれて嬉しいな」
柔らかく笑う水希の笑顔に玲王は胸を高鳴らせる。あーもう、どんだけ俺を惚れ直させれば気が済むんだか。なんて思っていると、彼女が声を出す。
「それって今朝の新聞?」
「ん?ああ、水希も読むか??」
どうやら新聞を読みたいらしい。玲王は新聞紙を開き、水希は覗き込んでくる。
「●●社の株価、昨日より下がってるね」
「だな。この会社の株は買ってなかったし…正解だったな」
学生とは思えないほどの意識が高い会話だが、これが2人にとって普通なのだ。暫く新聞に書かれていることについて話し合っていると、気づけばそろそろ片付けねばいけない時間になっていた。
「片付けは俺がやっとくから、水希は先に学校行く支度しといて」
「分かった、ありがとう」
「水希、お待たせ……って、新聞読んでたのか?」
「わっ!れー君。片付けありがとう。うん、もう少ししっかり読みたかった記事があったから」
片付けを終え、学校に行く支度を終えた玲王は水希が待っているリビングへ。すると水希は新聞を読んでいた。
「ほら、この記事とか――――」
真剣な顔で玲王に話している水希だが、肝心の彼は水希の顔を見ているだけで話は聞いていない。
(はー、今日も可愛いなぁ。真剣な表情とか、嬉しそうにはにかむ顔とか……ガチ可愛い。学校行きたくねぇな…可愛い顔は俺だけが知ってりゃいいし。でも、そうすると水希が悲しむしな。はぁ……)
「れーくん?」
「んぁ…?悪ぃ、なんだ??」
「ばぁやさんが車の準備出来ましたって」
「そうか、じゃあ行くか」
水希から新聞を取り、テーブルに置いてカバンを肩に掛けて、部屋を出る。