ある日の菫と人魚 その日は雲ひとつない青々とした晴天だった。今日は先生でもあり、人魚学者であるピエーデ・チカリトーチェによる特別講義がある事を忘れていた。走りなれない革靴で土を蹴りながら、急いで向かう。
青年の名前はヴィオラ。人魚に最愛の妹を助けられて以来、人魚を正式に発見し、そして人魚を保護する事を夢にしている。普段の彼はピエーデの元で勉学に励んでおり、また気分屋である彼に振り回されている。今日の特別講義も唐突な電話をひとつ寄越し、寝起きの状態で使用人に今日は13時からシレーナ海で特別講義だ!と言っていた、とだけ伝えられた。珍しい休日で昼まで寝ていた彼は大急ぎで身支度と準備を行ったものの、彼の住むチッタディーノという町と、シレーナ海は汽車を利用する必要がある為に、こうしてヴィオラは走っているのだ。
2247