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    koimari

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    ジャンホ×チャンス

     最近兄貴がおかしい。
     兄貴と新たに越してきた部屋で、二人で寝るには狭すぎるシングルサイズのベッドの上で、兄貴は長い足を投げ出していた。やくざだった頃のものはほとんど手放し、最低限のものののみを残したはずだが、いかんせん収納スペースがないものだから、棚やケースでワンルームの部屋はさらに手狭になっていた。得意のポーカーフェイスで盗み見ると、当然気づいた兄貴はじろじろ見るなとでも言うように顔を顰めた。おかしいな。
     おかしいといえば、退院してからの兄貴だ。まず快気祝いだと何度勧めても酒を一滴も口にしない。ただ煙草はやめられなかったらしく、それでもだいぶ本数の減ったそれを、ジャンホに隠れて吸っている。何より、身体の傷が癒えて数ヶ月、そろそろ半年経つと言うのに、一度もセックスしていない。一度もだ。
    「兄貴の大事なちんぽが爆発したらどうするんですか!?」
    「突然でかい声を出すな!」
     反射的に一喝して、兄貴は気まずそうに目を逸らした。どちらからともなく誘っては毎日のように耽っていたことは忘れてはいないらしい。
    「……未成年にはもってのほか、らしい」
     酒も煙草も、あとセックスも。建前でなく。知ってたか?と真剣に問うものだから、知ってて勧めてたんじゃなかったんですかとも言いにくい。ヤクザの世界に十年以上ずっぽりだった兄貴の常識、兄貴を取り巻いていた世界では違う。
    「でもちょっとぐらいは……。兄貴もたまるでしょ?」
     兄貴のそばに寄り、体重をかけると勢いよく跳ねのけられた。
    「飛行機の乗り方も知らないガキのくせにガタガタいうな!」
    「兄貴、先生に会ってるんですか」
     先生に関係がバレている?と思ったが、バレるも何もそういや見られてたなと思い出す。兄貴、どんな顔で保護者として会いに行ってんだろ。それとも覚えてないのかな。保護者として、自身は通わなかった高校にいる兄貴を想像する。大きな体を戸口にぶつけそうにしながら教室へ入り、寡黙に先生に一礼。そして脚が余って仕方がない椅子へと居心地悪そうに座る。そうして「ジャンホはどうですか」なんてぼそぼそと話すのだろうか。
     保護者として、名前は使わせてもらっていたはずだが、本格的に保護者一年生となった兄貴もまた、学ぶことがあったのだろう。
     ずっと染みついた〝常識〟を疑って、すっぱり……とはなかなかいかないみたいだけど進化できる兄貴はすごいし、今までと変わらずジャンホにとってはかっこいい。何よりそれはジャンホと共に生きるためらしい。それってすっごい愛だな。
     思わずニターッと緩んだ顔に、兄貴はキスする代わりに額を小突いた。
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