夢で逢えたら活気あふれる街を歩きながら周りを見渡す。
人、ひと、、ヒト。
その人混みに紛れて自分も仕事場へ足を運ぶ。
周りは時間が流れているけれど、自分だけ時が止まったまま。そんな気持ちになる。
「……ただいま。」
仕事を終え帰宅する。真っ暗な部屋に向かって自分の声だけが響いて手を強く握った。
どれもこれもあいつが悪い。
隣に人がいることが当たり前になりつつある事に困惑する。
「ちっ。」
苛立ちを舌打ちで誤魔化し風呂へ向かう。
こんな時は前は出来なかった湯を張った浴槽でゆっくりするに限る。
天井をぼーっと眺めていると、急に浴室のドアが開いた!
「伴!今帰ったぞ!!!さっきの歌はなんだ!もう1回歌ってみろ!」
「は?歌ってなんだよ……てか開けるな。」
手近にあった桶を投げつけるも、避けられ距離を詰められる。
こいつはいつもこんな感じに俺の心に土足で入ってきて平気で居座る。
「……歌なんて歌ってる自覚ない。」
歌なんて知らない。生きていくことに今まで必死だった。
今でこそ仕事をして自分で作った飯を食べて寝てと、人並みの生活を送っているがつい数年前までは人を殺すために飛行機へ乗っていたのだ。
さらにそこにたどり着くまでにも1人で生きてきた。歌なんて覚えるなら米のひと粒を得るために頭を使っていた。
そんな俺が歌を歌うなんてあり得ない。
「綺麗な歌だったぞ!どこの歌かはわからんが……そうだ!次の休みは思い切り歌えるように丘へ行こう!握り飯でも持ってな!【ぴくにっく】というやつらしいぞ!」
「……それ作るの誰だよ。」
勝手に服を脱いで一緒に風呂に入ってくる事には触れず狭い浴室に入ってこようとするので、邪魔だと押し返す。
全く気にもとめられず浴槽から出た頭を洗われる。
こいつやっぱり俺のこと猫だと思ってんだろ。
その夜は夢を見た。
はっきりとは見えない視界。誰かの背に背負われ、紐のようなもので身体を拘束されていた。
俺を背負っているのはおそらく女。
等間隔で尻を叩かれる。揺れる視界に合わせて襲う眠気。
女は何か言っている。
閉じる瞼の先には女の口角が上がった口元しか見えなかった。
……おやすみ。……い夢……みる……よ。勇……。
※※※言い訳※※※
ない!坂に惜しみない愛を注がれ昔の愛が心の隙間から溢れ出す伴ちゃんがいてもいいんじゃないかの話。