訓練後、任務前 ●
「ついてくんなよ」
「ホテルこっちやねんもん」
訓練が終わり、デブリーフィングも終わり。
朝っぱらから苛め抜かれたくたくたの身体を携えて、ジェラードは帰路を行く。ありふれたアメリカの街の風景。いつもの光景。一つだけ異質なのは――隣に『新入り』の日本人のガキがいることで。
なんとなく、訓練を通して懐かれたなという気配はするが……ここまでじゃれついてくるとは思わなかった。
「自分、どこ出身~? 前はどこでメディックしてたん~? 戦地どゆとこ行ってた~? てか彼女おる~? どこ住み~?」
馴れ馴れしく、さも当然の顔をして、隣のサクラが首を傾けジェリーの顔を覗き込む。好奇心に満ちた黒い瞳。転校生が来た時の学生かよと思いつつ、ジェリーは隠しもせず溜息を吐いた。
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