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    uxiro_xxxx

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    uxiro_xxxx

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    【嶺蘭SS】
    8月28日 / 勝負

    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ

    ##嶺蘭SS

     確かにそれを承諾したことには間違いないが、いざ自分が不利の状況下に置かれると、言わなければ良かったと思わないことはない。

     リビングのソファー並んで座り、テレビを点けると、嶺二と蘭丸の後輩である音也と真斗の姿が映った。とあるクイズ番組がちょうど始まり、音也と真斗は同じチームに割り当てられ、チーム戦によるクイズ対決が繰り広げられていた。最初は後輩たちの活躍を見ようと、二人は番組を見続けていたが、途中から嶺二は「勝負」を持ちかけたのだった。ただ見ているだけじゃつまらないから、ぼくたちもクイズに答えよう。勿論、負けた方には罰ゲーム、勝った方の言うことをなんでも聞く、王様ゲーム方式で、と。いつか二人で取り組んだ企画の撮影ものでも、勝負事を二人の間でやっていたこともあり、蘭丸はすんなりと勝負を受けた。
     ……と、小さなリビングでの戦いの火蓋が切られたのが数時間前。結果は、嶺二の勝利だった。男に二言は無いとは言えど、目の前のやけにニヤついた嶺二の顔を見ては、過去の厄介なイタズラの数々がフラッシュバックする。大抵がロクなことが無かった。手の込んだドッキリ企画のようなものから、変態じみたものまで色々と……しかも、今は二人しかいないリビングである。蘭丸は、大きなため息をついた。
    「おまえの勝ちだろ。なんもねぇなら、これで終わりで良いんだぜ?」
     嶺二は蘭丸の顔の前に、広げた手のひらを向ける。
    「そうは問屋が卸さない! なんちゃって〜」
     嶺二はソファーから離れて、急いで何かを取りにキッチンのほうへと向かった。そしてまた、忙しない態度で、蘭丸の隣へと腰をかける。
     ローテーブルに置かれたのは、両手に収まる程度の長方形の紙箱。その蓋を開けると、小ぶりのサイズのチョコレートが六つ並んでいた。
    「この間、ロケ先で気になって買ったチョコレート。食べてなかったなあ〜って思って」
     嶺二は紙箱に挟まった、小さな冊子を開く。
    「一個ずつ中身が別の味で……お酒の味がするみたいなんだ」
     ローテーブルに置いた紙箱を両手で持って、蘭丸の前に差し出す。
    「……てなわけで、これ。ぼくに食べさせてちょ!」
    「ああ!?」
     蘭丸は思わず声を大きく上げた。
    「罰ゲームだよ〜? 勝った方のことなんでも聞くって決めたよね〜? あとあと、ただ手で貰うのはつまんないなあ」
     嶺二は蘭丸に詰め寄り、上目遣いでねだる。
    「王様ゲームでも鉄板だよね、何番と何番の人がポッキーの端と端を咥えてねってやつ」
    「ガキか変態趣味のおっさんかのどっちかだな」
     そう吐き捨てるも、蘭丸はチョコを手で掴み、自分の口に半分咥えた。思っていたよりも小ぶりで、唇の先で抑えようとしても、こぼれ落ちてしまいそうで、チョコの片側の端はほとんど出ていなかった。
     意地悪に口角を上げたままの嶺二は、紙箱をローテーブルに下ろし、蘭丸の次の行動を待つ。その目つきに若干の苛つきを覚えた蘭丸は、すぐに嶺二の口にチョコを押し込めた。二人の口の間でチョコが割れ、中から酒……ブランデーの風味が漂い、口の中を滑り流れる。蘭丸は口移しで、チョコの苦味を嶺二の口に押し付けようとするも、嶺二は蘭丸の後頭部に手を回して、押し付けられた口から舌を絡ませた。チョコの苦味と、ブランデーの風味が二人の間で混ざり合い、溶けていく。
     嶺二は後頭部に回した手を下ろし、蘭丸を解放する。口の周りに残った唾液を、舌で舐め、蘭丸を見つめる。蘭丸は睨みつけるように、嶺二を見返していた。
    「満足か?」
    「え? それって満足じゃないって言えばもう一個、してもらっていいの?」
     そう言い返す嶺二の軽口を受け流すように、蘭丸は紙箱に残ったチョコを一つ、自分の口の中に放り込んだ。
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    uxiro_xxxx

    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月31日 / 夏の残像

    嶺蘭要素薄めだけど、私の中では嶺蘭です。蘭丸ASメモリアル「夏休みの作文」要素を入れてます。
    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     茹だる夏は蜃気楼に溶けていく。
     そしてまた、嗚咽のような波音がやってくる。大きな黒い波は、すぐにぼくを飲み込んで、口の裂けたクラムボンがメメント・モリの合唱をする。不協和音に苛まれ、ぼくは逃げ場を探す。遠く見える緑を目指して駆けて行く。緑の中へ、緑の中へ! 
     眩しい太陽に照らされた、真夏の緑。けたたましい蝉の声、水滴が残る朝顔。ぼくは見た。
     真っ白な少年はいつもそこにいて、ぼくを見つけて振り返る。丸い瞳を向けて、輝く髪を揺らす。心地良い暑さと、赤の実と、真っ白な少年。でもぼくは、いつもこのことを忘れてしまう。

     おはよう、絶望。


     *   *   *


     無機質なエアコンの送風音、壁越しに伝う忙しない足音に物音。とあるテレビ局の楽屋の一室で、寿嶺二は、本日出演するバラエティ番組の台本に目を通していた。今回の出演は、所謂ひな壇。内容は、夏のおすすめスポットを紹介し、そのテレビ局が運営する夏イベントの中継も兼ねた生放送番組だ。事前に用意されていたトピックスには、出演者の夏の思い出に関する内容もあり、嶺二は復習するように目を通していた。さらに、今日の出演者にはシャイニング事務所からもう一人いた。
    9397

    uxiro_xxxx

    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月17日 / 1/fゆらぎ

    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     全身を包む熱気、背中にじわりと広がる汗の感触、カーテンの隙間から差し込む日差し。遠くからは車の走行音と、蝉の鳴き声が聞こえる。暑さで寝苦しいながらも、眠気が勝ってしまう微睡みの中で、嶺二は今日がオフだと思い出し寝返りをうつ。日差しに背を向け、腕を前に出すと、すぐ隣の温もりに触れた。薄く目を開くと、こちらに顔を向けるように眠っている蘭丸が見えた。普段の、セットされた髪型とは異なり、あどけなさが見えるサラリとした銀髪。その隙間からは、長いまつ毛が下を向いている。ぐっすりと眠っているその寝顔は、普段の彼の気の強い態度からは想像出来ないような、緩んだ表情……無防備とも言える表情をしている。薄く開いた口からは、小さな寝息が聞こえる。カーテンから差し込んだ日差しは、蘭丸の白い肌のその首筋を照らす。嶺二はその日差しの当たる部分をなぞるように、指先を滑らせる。首、鎖骨、肩、胸……どくん、どくん、どくん。手のひらを伝う、心臓の音。その音が、自分の呼吸とシンクロするような感覚を覚えると、まるで身体のつながりはなくとも、蘭丸と一つになれたようにも思え、嶺二は安心感に包まれた。そうしているうちに、目蓋がゆっくりと視界を落とす。嶺二は蘭丸の胸に頭を埋めるように、寄り添って眠りについた。
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    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月31日 / 夏の残像

    嶺蘭要素薄めだけど、私の中では嶺蘭です。蘭丸ASメモリアル「夏休みの作文」要素を入れてます。
    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     茹だる夏は蜃気楼に溶けていく。
     そしてまた、嗚咽のような波音がやってくる。大きな黒い波は、すぐにぼくを飲み込んで、口の裂けたクラムボンがメメント・モリの合唱をする。不協和音に苛まれ、ぼくは逃げ場を探す。遠く見える緑を目指して駆けて行く。緑の中へ、緑の中へ! 
     眩しい太陽に照らされた、真夏の緑。けたたましい蝉の声、水滴が残る朝顔。ぼくは見た。
     真っ白な少年はいつもそこにいて、ぼくを見つけて振り返る。丸い瞳を向けて、輝く髪を揺らす。心地良い暑さと、赤の実と、真っ白な少年。でもぼくは、いつもこのことを忘れてしまう。

     おはよう、絶望。


     *   *   *


     無機質なエアコンの送風音、壁越しに伝う忙しない足音に物音。とあるテレビ局の楽屋の一室で、寿嶺二は、本日出演するバラエティ番組の台本に目を通していた。今回の出演は、所謂ひな壇。内容は、夏のおすすめスポットを紹介し、そのテレビ局が運営する夏イベントの中継も兼ねた生放送番組だ。事前に用意されていたトピックスには、出演者の夏の思い出に関する内容もあり、嶺二は復習するように目を通していた。さらに、今日の出演者にはシャイニング事務所からもう一人いた。
    9397

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    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月17日 / 1/fゆらぎ

    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     全身を包む熱気、背中にじわりと広がる汗の感触、カーテンの隙間から差し込む日差し。遠くからは車の走行音と、蝉の鳴き声が聞こえる。暑さで寝苦しいながらも、眠気が勝ってしまう微睡みの中で、嶺二は今日がオフだと思い出し寝返りをうつ。日差しに背を向け、腕を前に出すと、すぐ隣の温もりに触れた。薄く目を開くと、こちらに顔を向けるように眠っている蘭丸が見えた。普段の、セットされた髪型とは異なり、あどけなさが見えるサラリとした銀髪。その隙間からは、長いまつ毛が下を向いている。ぐっすりと眠っているその寝顔は、普段の彼の気の強い態度からは想像出来ないような、緩んだ表情……無防備とも言える表情をしている。薄く開いた口からは、小さな寝息が聞こえる。カーテンから差し込んだ日差しは、蘭丸の白い肌のその首筋を照らす。嶺二はその日差しの当たる部分をなぞるように、指先を滑らせる。首、鎖骨、肩、胸……どくん、どくん、どくん。手のひらを伝う、心臓の音。その音が、自分の呼吸とシンクロするような感覚を覚えると、まるで身体のつながりはなくとも、蘭丸と一つになれたようにも思え、嶺二は安心感に包まれた。そうしているうちに、目蓋がゆっくりと視界を落とす。嶺二は蘭丸の胸に頭を埋めるように、寄り添って眠りについた。
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    uxiro_xxxx

    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月10日 / ハート

    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     これはあいつへの労いだ。
     ここ最近、不規則な時間での仕事が立て続き、睡眠時間も十分にとれていない。あいつの場合、おれと違ってショートスリーパー気味なので、十分な時間を取らなくてもどうにかなる分、仕事にも今のところ支障をきたしていないようだ。しかし、それでも見えないところで疲労が出てきていることには違いない。それに加えて食事だ。最近はろくな食事が取れていないはずだ。シンクや冷蔵庫、インスタントのゴミの様子見れば一目瞭然だ。寿弁当だって、忙しすぎてかコミュニケーションが取れていないようで、最近は手配しているのを見ていない。相当忙殺されている。……とはいえ、あの快活な、あいつのお袋さんの人柄あってか、ついこの間は「母ちゃんに文句言われちゃったよ」なんて小言を言ってたから、親子関係に問題は出ていないようだが。……あいつんちの唐揚げ、そろそろ食べてぇな。ああいけねぇ、手が止まってた。今日は比較的早い時間に帰って来れると聞いていた。あまりの忙殺ぶりを察した日向さんが、各所に相談の上、スケジュールを調整してくれたとのこと。今でもこうやって、日向さんに迷惑がかかってんのはどうかと思うぜ? 日向さんだって自分の仕事があるんだからよ。……まあ、ありがたくもそんな配慮があってか、はやく帰ってくるあいつのために、おれは飯を作っている。あいつへの労い……いや、あいつと一緒に飯が食いたかった、だけ、かもしれない。あー、今のらしくねえ。あいつに聞かれたら面倒くさい絡みをされるから絶対に言わねえ。一緒に飯を食うなら、デリバリーでも、外食でも、なんでも良かったかもしれねぇが、そこはおれが振る舞ってやりたかった。労いと、日常の共有。何より、あいつがおれの作る飯を食いたいって、いつかの日に泣き言のように言ってから、振る舞うタイミングを失っていて……その後ろめたさにも似た使命感があった。
    2305

    uxiro_xxxx

    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月4日 / 酔い

    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     玄関の開閉音と同時に強い物音が響いた。
     日付の変わる手前の時刻。リビングでうたた寝をしていた蘭丸は、その物音で目を覚まし、思わず立ち上がった。リビングのドアを開け、玄関に向かうと、嶺二が玄関から廊下へ倒れ込むように転がっていた。蘭丸は嶺二の側に駆け寄り、その背中を摩る。
    「おい、大丈夫かよ……って……クセェ」
     嶺二からは、汗臭さに混じった居酒屋特有の油っぽさとアルコール臭がした。「クセェ」その一言に反応するように、倒れていた嶺二がもぞもぞと顔を上げようと動く。汗ばみ紅潮した顔面が、蘭丸のほうを向く。
    「だははランラン。クセェってドイヒー」

     普段からふざけたハイテンションなノリが通常運転とはいえ、酒に呑まれるようなことあまりない。こんな風に悪酔いして帰ってくるなんてことも、蘭丸はあまり見てこなかった。……というより、決まって蘭丸が先に酔って記憶が飛んでいることがほとんどだった。いつかの日に「酔ってベロンベロンになったランランを介抱するぼくの身にもなってごらん?」と言われたこともあったが、逆の立場が来いと頼んだ覚えはない。今日は嶺二が出演していたドラマの打ち上げで、夜まで飲み会とは聞いていた。ヘラヘラと緩み切っただらしない顔を見せ、また床へと頭を突っ伏す。こんな状態でよくもまあ一人で帰って来れたものだと、蘭丸はため息をついた。しゃがみ込み、艶めいた栗色の頭に手を当て、軽くゆする。
    1848