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    uxiro_xxxx

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    【嶺蘭SS】
    8月22日 / 猫

    前回の続き
    https://poipiku.com/11768584/12098162.html
    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ

    ##嶺蘭SS

     久しぶりの二人の時間、久しぶりの嶺二の家。模様替えまでされた小綺麗な部屋にはじまり、おもてなしの域を超えた、嶺二による蘭丸の歓迎は、二人が並んでプレステに向かうと同時に、その意味が蘭丸には分かった。ゲーム画面が点き、「手加減無しだ」と宣言したものの、結果は嶺二の圧勝。負けず嫌いが高じ、ひたすら勝負に燃え、子供のように馬鹿騒ぎをした。つまるところ、馬鹿になりたかったのだ。蘭丸をもてなす部屋作り、料理、遊び、その他の気遣いのようなすべては、自分の――嶺二自身のための――快楽的一興。事務所の空き部屋に引き摺り込まれてから、嶺二の思うまま。それに気付いた時、蘭丸もまた、どこか欠乏していた欲求に気付いた。しかし、「それ」は口にしたら嶺二の思うツボだった。同時に、蘭丸にとっては口が裂けても言いたくはなかった。だから、今は流れに流されるだけだった。

    「気分屋なんだよ、てめぇは」
     ゲームコントローラーを握ったままの嶺二が、隣に座る蘭丸のほうを向き、口先を尖らせて詰め寄る。
    「気分屋〜? それはランランでしょ。だって猫ちゃんだし」
    「どういう意味だ?ソレ」
    「複数の意味を含む」
     睨み合うように顔を合わせ、先に折れたのは嶺二だった。嶺二は、蘭丸の下唇を柔らかく食んでら、上目遣いを向けた。
    「でも、飽きちゃったから、次の遊びがしたいな」
     蘭丸がコントローラーから手を放すと、嶺二は身を乗り出し、二人は床に傾れ込んだ。

      *   *   *

     夕陽に照らされた栗色の髪は、オレンジの光を放ち、思わず目を細めてしまう。
     カーペットの敷かれた床に仰向けになる蘭丸は、申し訳程度に頭に添えられたクッションから顔を上げる。嶺二は、蘭丸に覆い被さるように、その胸元に頭を当て、うたた寝をしているようだった。
     蘭丸は、嶺二の頭を撫で、指先に触れる髪を、さらりと指の間に通す。ふんわりとした髪の感触に、ふとした光景を思い返した。

     自宅の周りを時折ウロウロとしている茶トラ猫。蘭丸の姿を見つけると、人懐っこい態度で、足周りに擦り寄る。蘭丸もその猫の頭や背中を撫でていた。暫く撫でると、何かをねだるように鳴くので、それを合図に、蘭丸はコミュニケーションを止める。下手に餌を与えると、近所トラブルになりかねないからだ。その茶トラ猫は、別の日も、また別の日も、大きな瞳を輝かせて蘭丸の帰りを待っているようだった。まるで――

    「ぼくはぁ、猫じゃないぞぉ……」
    「あ?」
     蘭丸に覆い被さっていた嶺二が、むくりと顔を上げ、蘭丸と顔を合わせた。ぼんやりとした目つきのまま、嶺二は仰向けの蘭丸の頭を撫でた。
    「猫を撫でるみたいにしてたから、仕返し」
    「おれも猫じゃねぇよ」
    「ぼくより猫っぽいでしょ」
     輪郭をなぞるように、嶺二の手は蘭丸の髪を滑らせる。目元までかかった銀の前髪を軽くかき上げ、その額にキスをした。嶺二の大きな瞳は、何かを含ませ、まっすぐ一点を見つめている。……あいつだったら、ここでサヨナラなんだがな。
    「何が欲しい」
     その瞳に尋ねた。
    「もっと君が欲しい」
     蘭丸は思わず口角を上げた。オレンジの光をまとった前髪を軽く上げ、蘭丸は嶺二の額にキスをした。
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    uxiro_xxxx

    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月31日 / 夏の残像

    嶺蘭要素薄めだけど、私の中では嶺蘭です。蘭丸ASメモリアル「夏休みの作文」要素を入れてます。
    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     茹だる夏は蜃気楼に溶けていく。
     そしてまた、嗚咽のような波音がやってくる。大きな黒い波は、すぐにぼくを飲み込んで、口の裂けたクラムボンがメメント・モリの合唱をする。不協和音に苛まれ、ぼくは逃げ場を探す。遠く見える緑を目指して駆けて行く。緑の中へ、緑の中へ! 
     眩しい太陽に照らされた、真夏の緑。けたたましい蝉の声、水滴が残る朝顔。ぼくは見た。
     真っ白な少年はいつもそこにいて、ぼくを見つけて振り返る。丸い瞳を向けて、輝く髪を揺らす。心地良い暑さと、赤の実と、真っ白な少年。でもぼくは、いつもこのことを忘れてしまう。

     おはよう、絶望。


     *   *   *


     無機質なエアコンの送風音、壁越しに伝う忙しない足音に物音。とあるテレビ局の楽屋の一室で、寿嶺二は、本日出演するバラエティ番組の台本に目を通していた。今回の出演は、所謂ひな壇。内容は、夏のおすすめスポットを紹介し、そのテレビ局が運営する夏イベントの中継も兼ねた生放送番組だ。事前に用意されていたトピックスには、出演者の夏の思い出に関する内容もあり、嶺二は復習するように目を通していた。さらに、今日の出演者にはシャイニング事務所からもう一人いた。
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    uxiro_xxxx

    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月17日 / 1/fゆらぎ

    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     全身を包む熱気、背中にじわりと広がる汗の感触、カーテンの隙間から差し込む日差し。遠くからは車の走行音と、蝉の鳴き声が聞こえる。暑さで寝苦しいながらも、眠気が勝ってしまう微睡みの中で、嶺二は今日がオフだと思い出し寝返りをうつ。日差しに背を向け、腕を前に出すと、すぐ隣の温もりに触れた。薄く目を開くと、こちらに顔を向けるように眠っている蘭丸が見えた。普段の、セットされた髪型とは異なり、あどけなさが見えるサラリとした銀髪。その隙間からは、長いまつ毛が下を向いている。ぐっすりと眠っているその寝顔は、普段の彼の気の強い態度からは想像出来ないような、緩んだ表情……無防備とも言える表情をしている。薄く開いた口からは、小さな寝息が聞こえる。カーテンから差し込んだ日差しは、蘭丸の白い肌のその首筋を照らす。嶺二はその日差しの当たる部分をなぞるように、指先を滑らせる。首、鎖骨、肩、胸……どくん、どくん、どくん。手のひらを伝う、心臓の音。その音が、自分の呼吸とシンクロするような感覚を覚えると、まるで身体のつながりはなくとも、蘭丸と一つになれたようにも思え、嶺二は安心感に包まれた。そうしているうちに、目蓋がゆっくりと視界を落とす。嶺二は蘭丸の胸に頭を埋めるように、寄り添って眠りについた。
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