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    uxiro_xxxx

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    uxiro_xxxx

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    【嶺蘭SS】
    8月24日 / 電話

    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ

    ##嶺蘭SS

    『あ、もしもしランラン? いまぼくんち?』
    「ああ」
    『ほんっっっとにごめん! なぁんか渋滞食らっちゃってさぁ、遅くなりそう〜』
     時刻は20時を少し過ぎた頃だった。普段なら、帰りが遅くなる連絡など、こまめに連絡はしないし、したとしてもメッセージを残す程度。しかし、今日は嶺二が電話で蘭丸に連絡をした。「渋滞」と言っているように、嶺二は車を運転しながら電話をかけている。特別約束をしたわけでは無かったが、今日は夜の早めの時間から二人で一緒にいれたら……なんて話をしていた。蘭丸はカーテンを開けて、外の様子を見る。ベランダに出て、少し遠く見える位置に打ち上げ花火が上がっているのが見えた。
    「花火、始まってんぞ」
    『うわーーーん、せっかくランランと一緒に見て、夏を感じたかったのにさぁ』
     数日前に花火大会の案内を見た二人は、この会場なら嶺二の家のベランダからでは見れるのでは? と言ったのが事の発端だった。そして予想通り、蘭丸はベランダから花火が見えるを確認して、電話の向こうでウダウダと声を上げる嶺二の声を聞いている。
    『……ったくもう、事故かなあ。まったく進まないんだよぉ』
    「あれじゃねぇの? 花火会場ちけぇ道通ってねぇか?」
    『……それだ』
    「馬鹿かよ」
     蘭丸はベランダの塀に腕を置いてもたれかかり、遠く見える打ち上げ花火をぼんやりと見ていた。距離はあるものの、高く上がる花火はしっかりとその円や色を確認できる。特等席では無いながらも、人混みや人目を気にしないで花火を楽しめるぐらいには最適な場所だった。
    『花火、ベランダから見えてる?』
    「ああ、しっかり見える。早く帰って来ねぇと、終わるぞ」
    『そうだよねえ……あ、ちょっと前が進んだ』
     蘭丸の電話越しに嶺二の車の走行音が聞こえる。そして、少ししてから電話越しの音に変化があった。
    『あ! 花火!』
     道を進んだ嶺二の車は、花火の見える位置に進んでいたようだった。
    「そっちからも見えるか?」
    『うん! 今の花火、特に大きかったことない? ベランダからも見えた?』
    「おう、でけぇやつな。……今のやつ変わった形してなかったか?」
    『見えた見えた! なんかブーメラン? みたいな形のやつ?』
    「それだそれ」
     電話越しに同じ花火を見ていることに、二人はふと笑みが溢れる。まさに同じ空の下、なんてベタな情景。電話越しの嶺二がけたけたと笑い声を上げる。
    『はやく君に会いたいな』
     思わず声に漏れ出たであろう、電話越しの本音を耳にして、蘭丸は口の両端を上げる。冷蔵庫の中には、この日のために嶺二が事前に用意した缶ビールが残ったままだった。ビールだって、花火だって、二人で過ごすことだって、何も今日が初めてというわけではない。ただ、今日の二人の時間が楽しみだった。ただ、それだけ。
    「ああ、早く帰って来ねぇと、てめぇの分のビールも飲む」
    『そ、そんなぁ! まぁたベロベロのランランを介抱するの?』
    「そっちかよ」
     電話越しに聞こえる嶺二の笑い声が、少しずつ遠くなる花火の音に混じった。
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    uxiro_xxxx

    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月31日 / 夏の残像

    嶺蘭要素薄めだけど、私の中では嶺蘭です。蘭丸ASメモリアル「夏休みの作文」要素を入れてます。
    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     茹だる夏は蜃気楼に溶けていく。
     そしてまた、嗚咽のような波音がやってくる。大きな黒い波は、すぐにぼくを飲み込んで、口の裂けたクラムボンがメメント・モリの合唱をする。不協和音に苛まれ、ぼくは逃げ場を探す。遠く見える緑を目指して駆けて行く。緑の中へ、緑の中へ! 
     眩しい太陽に照らされた、真夏の緑。けたたましい蝉の声、水滴が残る朝顔。ぼくは見た。
     真っ白な少年はいつもそこにいて、ぼくを見つけて振り返る。丸い瞳を向けて、輝く髪を揺らす。心地良い暑さと、赤の実と、真っ白な少年。でもぼくは、いつもこのことを忘れてしまう。

     おはよう、絶望。


     *   *   *


     無機質なエアコンの送風音、壁越しに伝う忙しない足音に物音。とあるテレビ局の楽屋の一室で、寿嶺二は、本日出演するバラエティ番組の台本に目を通していた。今回の出演は、所謂ひな壇。内容は、夏のおすすめスポットを紹介し、そのテレビ局が運営する夏イベントの中継も兼ねた生放送番組だ。事前に用意されていたトピックスには、出演者の夏の思い出に関する内容もあり、嶺二は復習するように目を通していた。さらに、今日の出演者にはシャイニング事務所からもう一人いた。
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    uxiro_xxxx

    TRAINING【嶺蘭SS】
    8月17日 / 1/fゆらぎ

    #ういの夏の嶺蘭強化月間シリーズ
     全身を包む熱気、背中にじわりと広がる汗の感触、カーテンの隙間から差し込む日差し。遠くからは車の走行音と、蝉の鳴き声が聞こえる。暑さで寝苦しいながらも、眠気が勝ってしまう微睡みの中で、嶺二は今日がオフだと思い出し寝返りをうつ。日差しに背を向け、腕を前に出すと、すぐ隣の温もりに触れた。薄く目を開くと、こちらに顔を向けるように眠っている蘭丸が見えた。普段の、セットされた髪型とは異なり、あどけなさが見えるサラリとした銀髪。その隙間からは、長いまつ毛が下を向いている。ぐっすりと眠っているその寝顔は、普段の彼の気の強い態度からは想像出来ないような、緩んだ表情……無防備とも言える表情をしている。薄く開いた口からは、小さな寝息が聞こえる。カーテンから差し込んだ日差しは、蘭丸の白い肌のその首筋を照らす。嶺二はその日差しの当たる部分をなぞるように、指先を滑らせる。首、鎖骨、肩、胸……どくん、どくん、どくん。手のひらを伝う、心臓の音。その音が、自分の呼吸とシンクロするような感覚を覚えると、まるで身体のつながりはなくとも、蘭丸と一つになれたようにも思え、嶺二は安心感に包まれた。そうしているうちに、目蓋がゆっくりと視界を落とす。嶺二は蘭丸の胸に頭を埋めるように、寄り添って眠りについた。
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