仮面の下はその子供は、ある日突然ジャックとライカンの前に現れた。
「おい、じっちゃん!ズルいだろその手は!」
「これも戦略のうちだ……チェック。」
嬉しそうにライカンの白いナイトを弾くジャック。そう、あれはいつものように、じっちゃんにチェスで容赦なく追い込まれいたときだった。
チェックということは、まだ王手ではない。どこかにこの窮地から脱する手立てがあるはずなのである。だが、どこに……?ジャックが文字通り頭を抱えた、そのとき。
「──ナイトをE5に動かせ。」
「誰だッ!?」
茂みの影から凛とした声が聞こえて、ライカンは反射的に椅子から立ち上がった。一方、ジャックは落ち着いた顔で茂みへと声をかける。
「ずっとそこにいたな?とうとう痺れを切らしたか。」
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