僅かな幸せ雪の降る故郷は、スノーフル。
白い雪、ひらひらと舞い落ちて。
はぁーっと吐く息は白くなる。
「寒くないの?」
小さく首を傾げるフリスクに、サンズはヘヘッと笑い「皮膚がないからな。」と短く答えた。
彼女はそうなんだと、納得しつつもそれでも見た目は寒そうに見えるサンズにすっとマフラーを巻く
「‥‥おいおい、あんたの方が寒いんじゃねーか?」
「大丈夫。厚着はしてるから。」
「へへ、そっかよ?」
今のフリスクは、サンズがよく知っている優しい彼女だ。
(‥出来れば、このままのフリスクで居てもらえると助かるんだがな‥)
巻いてもらったマフラーをギュッと握りながら、悲劇はもう繰り返したくないとサンズは密かに願う。
どこか不安げなサンズに「どうしたの?」と心配そうな表情を浮かべるフリスク。
「‥あー、‥や、なんでもない。気にするな。」
このままで居てとか、今のあんたが好きだ。とか思うことは沢山あるのだが、それを言っても今の彼女は困るだけ。
付き合った記憶、敵対した記憶‥全ての記憶が彼女の心に残っては居ないのだから。
降り続ける雪は、寒さや冷たさを感じないものの、心を寒くさせ、冷たくしていくようには感じる。
「‥‥あー‥やっぱり寒いかもな‥アンタ、オイラ達の家に遊びに来ねーか。外よりは温かいぜ」
「うん、行きたい。」
「‥じゃ、お手を。お嬢さん。こっちだぜ。」
彼女の手をそっと引いて。
まだ平和なこの瞬間をサンズになりに楽しむ事にするのだった。