好きな子が、好きな声で。いつもの酒場で
トクトク‥‥、プハー
全て飲み干すと、瓶からまた継ぎ足し
トクトク‥、プハー
あっという間に、一瓶を開けてしまう。
「それくらいにしておいた方が。」
マスターに一声かけられるも、酒を飲む手を止められない。
「‥もう一本だ‥。」
「はぁ、知りませんよ?」
呆れた声で返されながらも、新しい瓶をテーブルにうつ伏せになった顔の横に置かれ、なんとか動く左手でその瓶を杖の様に手に取り、ムクッと起き上がる。
「‥へへ。飲まなきゃさ、‥これがなきゃな‥ホネ、だけに‥??」
「はぁ。」
ギャグにもならないつまらない言葉には、呆れしか返ってこない。
(‥あー‥‥フワフワする‥。‥‥やばい、‥無性に今、フリスクに、会いてぇな‥)
次第に、意識が遠くなっていく。
少しずつ、目も閉じてきて。
「‥‥くー‥‥‥、すぅ‥‥すぅ‥。」
‥
‥‥
「‥さ、‥んず。‥サンズ、起きて。」
「っ、‥‥んー‥?‥」
あれ、夢か‥?
耳に届いた声にぼんやりと起こされる‥
景色ははっきりとしないけど、これは夢か現実か。
好きな子が、好きな声でオイラを呼ぶんだ。
「‥ふ、り‥?」
「うん、フリスクだよ。サンズ、頑張って起きて。送ってあげるから、サンズの家に帰ろ?」
「‥‥‥おー‥‥じゃあ‥頼む、‥‥わ。」
「ちょっとまってまって?!;肩かすから。サンズ、頑張って!」
好きな子が、好きな声で、オイラのことで滅茶苦茶困ってる。
「‥あー、へへ。‥良い気持ち‥。」
「さ、サンズ!寝ちゃ駄目ー;」
本当は、ワープして部屋に帰るなんて容易だけど、今はまだこうして世話を焼いて欲しくなって。
「‥(もうちょっと、‥楽しも‥。)」
「もーー、サンズーー;」
好きな子が好きな声で、オイラを後数回くらい呼んでくれたら。
そんな意地悪な気持ちが芽生えて、サンズが近道を使って「この手があったじゃん。」なんてフリスクが涙目になるのは、もう少し後のお話。