悪い組織の手下その二「先輩のそのメガネって、度は入ってないですよね?」
唐突な後輩の話しかけに、キサノキヨシは端末のディスプレイから視線を上げた。椅子をくるりと回して、後輩であり雇い主のミギワキイトに向き直る。
「ああ、入ってない」
「ディスプレイにしてるとこもあまり見ませんし、オシャレメガネというには物足りなくないです?」
「そうだな。確かにディスプレイとして設定はしてるがあまり好きじゃない。そしてお洒落とは言い難い。お前の疑問はもっともだ。これはな、『伊達メガネ』だ」
何を言っているんだこの男は、という疑問符を顔に浮かべるミギワにキサノは続ける。
「俺が母子家庭だったのは知ってるな?」
「え、ええ。先輩の場合は他組織の息がかかってないか念入りに確認しましたので」
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