お嬢とじいじ⑤車は峠を抜けて高速に入った。薄くたなびく雲が青空をゆったりと泳いでいく。暫く経った頃、運転手が遂に口を開いた。
「兄貴、そろそろ佐川の叔父貴に休憩して頂きますか?」
「せやな。そうしよ。うちの西田は気ぃきくやろ。俺が組いた頃からの付き合いでのう、未だにこないして用聞きしてくれんねん」
「真島の兄貴には本っ当に世話になりましたから!正直兄貴にはあのまま俺らの組長になって欲しかったんすけど…でも、俺らは兄貴が幸せならそれでいいっす!…佐川の叔父貴、お煙草でもご用意しましょうか?」
運転手はさきほどその兄貴を殴った時は何の口もさしはさまなかったのに、まるで何事もなかったかのような調子で弟分面をしている。随分とよく教育されているようだ。
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