お嬢とじいじ①ほにゃ、とそいつは微笑んだ。つんと尖った唇で。
「抱いたってや」
そんなこと、出来るわけがない。この手は汚れすぎている。脅し、傷つけ、騙し、苦しめ。数々の人生を容易く狂わせ堕としてきた。他人から何かを奪い続けることしか知らない、穢れた手。
「あんたに、抱いたって欲しいねん」
思っていたより、ずっと重い。ずしりと熱く重たいのに、ふと目を離したら天に駆け上ってしまうのではないかと思うほどに、ふわふわとして、綿のようでもあって。
「だ、めだ。真島ちゃん」
手の震えを抑えながら、親と盃を交わした日。虐げられずに生きるために。生き続けるために。
「なぁんや。近江で長年極道張って直参にまで上り詰めたあんたが、赤ん坊抱くだけでそないに震えるやなんて」
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