表3 ポピュリズムの質問
「新聞社やテレビ局の記者は偏見
ELT1 に満ちており、庶民が知るべき事
実をしっかりと伝えていない」
「学者や専門家は庶民の生活から かけ離れていて、実際にこの国で
ELT2
何が起こっているかを分かってい ない」
「中央の官僚たちは、特定の集団
ELT3 の既得権益ばかりを気にし、庶民
の利益のために働いていない」
「財界のリーダーは従業員やお客
ELT4 を大切にしようというモラルに欠
けており、信頼できない」
ELT5 「政治家は当選すると、すぐに庶
民のことを忘れがちである」
MAN1 「ある人の政治的意見さえ知れ
ば、その人が善人か否かが分かる」
「政治的な見解が合わない人々
MAN2 は、単に誤った情報に基づいてい
るだけである」
「重要な政治的課題については、
SOV1 人々による直接投票によって最終
的に決めるべきだ」
「私たちの最も重要な政策は、政
SOV2 治家ではなく一般の人々が決める
べきである」
に、回答者の3分の2が「政府が都合の悪い
重大な情報を隠している」を、40%の人が 「新薬や新しい技術の実験が一般の人々の 同意を得ることなく行われている」を信じ
ている。これらの回答結果は、Majima & Nakamura 2019 の知見を裏付けるもので
あり、日本人が様々なタイプの陰謀論を信
じる傾向にあり、そうした人々の数は欧米 の状況と劇的に異なるわけではないことを
示唆している。
4.因子分析:陰謀論とポピュリズム
続いて、確証的因子分析を用いて、この質
問 群 から潜在因子 を 抽 出した。最 もパ
フォーマンスが高く、解釈しやすいのは、二
つの潜在因子に分けるモデルであった。
CONS1,4,5 は、本研究で“cons_antigov”(反
政府の陰謀)と名付けた因子を構成し、特に 政府に関する陰謀に重点が置かれる。その 一方で、CONS2,3,8 は“cons_classic”(古典
的な陰謀)と名付けた因子を構成しており、
秘密結社や宗教団体といった政府以外のア
クターにフォーカスしたものとなっている。
表4が示すように、この2因子のアプロー チが、6つの陰謀を一つの因子として扱う よりも、ロバストな解釈を生む。
次に、これらの陰謀論の因子を人口統計
学的な情報をはじめとするそのほかの情報 と組み合わせて、一連の重回帰分析を行う。
ここでは二つのモデルを作成した。一つは、 陰謀論の因子を従属変数として、大学教育
や私生活への満足度・アノミーなどの諸要
因が、そうした信念を持つ可能性に及ぼす
影響を探る。二つ目のモデルでは、回答者の 政党への感情温度(主流政党の自民党と立
憲民主党、およびポピュリスト政党のれい わとN国)を従属変数として、(ポピュリス ト態度と合わせて)陰謀論の因子を用いて、
これらの政治態度を説明する。