死刑囚は今日も藹々「────それでは、恐れ入りますがこちらへお入りください」
「ふ、このような杜撰な造りの檻程度で悪魔憑きを封じ込められるとでも? お前たちの安心が、こんなくだらないことで保てればいいがな」
「……っ、し、失礼します王子殿下……っ!」
「王子殿下……? 黒目、黒髪だと……?」
「……死刑囚か。どのような罪科を背負ってこの場に居るのか興味も無いが、逃げ場もなくこの俺と向き合うことになるとは憐れなものだ。せいぜい機嫌を損ねぬよう大人しくしていることだ」
「ああ、そうするよ。……そうしたいんだが……。…………ど、どうしたんだいったい、そんなにソワソワして。大丈夫か? 腹でも痛いのか?」
「えっ。俺を、気にかけるとは……。いや、そうではなく、この俺にそのような言葉をかけるとは恐れ知らずな……」
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