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    あさい

    @mtmt_shtn3

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    「かわいい女の子と大好きなキャラがくっついたらハッピーセット爆誕では?!」系のお人形遊び型夢女子
    二次創作の投稿先のひとつとして使います

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    あさい

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    のさん(# nogmino_ura)のお誕生日に寄せるオールキャラわちゃシュール会話文
    お誕生日おめでとうございます!🎂

    #OVERREQUIEMZ

    ⚠NANPA Attacks⚠◆◆◆The first wave: Lv.1◆◆◆

    「かなり見られているね。いきおくれの身分で若い娘さんたちから遠巻きにヒソヒソされる気分はどう、クロード?」
    「今ちょうど心ない言い方に傷ついたとこだよ。というか、俺を見てるとは限らないだろ」
    「見つめ返してみればわかるかもしれませんよ」
    「いや、そこまでする必要性も感じないだだだだ! 頭を鷲掴むなノイル、せめて何か言え!」
    「良いからたっぷり見つめてやれよ。ガンくれたお返しくらいしねぇと気が済まねぇだろが……!」
    「お前の闘争本能で俺まで燃やそうとするな! ぐ……なんて力だ……っ」
    「あ。……目が合った途端に声を上げて逃げていってしまった」
    「ハッ、ビビってやがったな。やるじゃねぇかクロード」
    「どう考えてもお前の行為への悲鳴だろ! あと少しで頭蓋が割れるところだったぞ、まったく」
    「私は黄色い悲鳴だったと思うけどなぁ!」
    「確かに恐怖の悲鳴ではなかったな。ユヒルが楽しそうで、俺も嬉しい」



    ◆◆◆Here it comes: Lv.2◆◆◆

    「またジロジロ見てやがんな……気付いてんだよこっちはよぉ」
    「誰かこいつに水をかけろ、今すぐにだ」
    「と思ったら小走りで俺たちの前に合流してきましたね。こういう時って後をつけるものじゃないんですか?」
    「うん、僕に尋ねた意図を聞くのが先かな」
    「いえなんとなく、偶然を装って他人と知り合う手法に長けていそうなので」
    「しっかり具体的じゃないか。まあそうだね、彼女がこれからすることは予想がつくよ」
    「私もわかるかも! クロード、前歩いててね」
    「ん? 何をそんなにワクワクして──、っと、お嬢さん、ハンカチ落としたぞ」
    「見事に罠にかかったね」
    「吸引力すら感じましたね。これは鍛え抜かれたハンカチ拾わせ」
    「なるほど、落とし物を届けた謝礼を口実に食事に誘う手口なんだな。勉強になる」
    「カイゼ様はその知識を誰に使われるおつもりで……?」
    「……あ、断っちゃった……」
    「お前たち全部聞こえてるからな。ユヒルはそんなに残念そうにするな、ああいうのがお好みなら後で思う存分実演してやるから」
    「ン? 今聞き捨てならない言葉が」
    「ヤバかったらオレが止めっからオマエは大人しくしてろ、話がややこしくなる」
    「だがノイル。もうナイフが出ているようだ」
    「ようだじゃありませんよねカイゼ様ぁ?!」



    ◆◆◆The attack: Lv.3◆◆◆

    『お兄さんカッコいいね! あたしとデートしない?』
    「ねえ王道来たよ!!」
    「お嬢様、音量はちょっと下げましょうね」
    「カイゼがビクッとなっていたね。なりすぎてちょっと浮いていたよ」
    「ご、ごめん。でもでも、クロードの反応は……?」

    「旅の途中でね。悪いが他を当たってくれ」
    『え~残念。商品ちょっと高くしちゃおっかな?』
    「はは、勘弁してくれ。あんたには俺よりずっといい男がお似合いだよ」

    「普通にイイ感じに会話してんぞ。なんかムカつくな」
    「そつがないですねぇ」
    「慣れが出ているね。眉一つ動かさない手練れの仕事だよ。それは向こうも同じようだけれど」
    「手練れ同士の戦い、か……」
    「ワクワクするね、カイゼ!」
    「ああ。だが音量はもう少し」
    「そうだよユヒル、またちょっと浮いたからね」



    ◆◆◆Arrival: Lv.4◆◆◆

    「魔女様たちは気が付いていないようだね。君はどう?」
    「後ろのか? 別に武器は持ってねぇだろアレ」
    「詰めが甘いね。視線の向きや表情までは見えていないのかな。その鬱陶しい髪が邪魔なんじゃない?」
    「煽んな、クロード目当てなことくらいオレもわかってる。どうする」
    「厄介ごとになる前に差し出して帰ろう。──クロード、その荷物を渡してくれるかな。こっちは余裕があるから」
    「そっちはオレが持ってやるよ。おら寄越せ」
    「は……? 急にどうしたんだお前たち。ついに優しさが芽生えたのか?」
    「バケモン見る目で見んじゃねぇよ、引きちぎって生のまま食うぞコラ」
    「優しさというのはね、いつどのように使うかが重要なんだ。僕たちも目的に応じて使ったまでのこと。そして今君の優しさを必要としている人たちが、後ろにいるよ」
    「は? 急に何言って──ひゅっ」

    「──ねえドロシー、クロードが五人に囲まれてる! しかも全員姉妹っぽいよ! すごい!」
    「マジでスゲェなアレ、女どうしで円陣組んで絶対逃がさねぇようにしてるぞ」
    「姉妹ならではの連携力だ。彼女たちには失礼だが、似た顔立ちに全方位囲まれる光景を想像するとぞっとしないな」
    「なんですかあれ怖……対人間の囲い網漁じゃないですか。さすがに助けた方がいい気がしてきましたね。ノイル、後腐れない感じに暴漢を装って蹴散らしてきてくださいよ」
    「誰がやるか! せっかくうまく荷物回収してきたのに戻るワケねぇだろ」
    「それに民を蹴散らすのは良くない。君の言葉で言うと、確実に後腐れる」
    「……あ、ねえ、普通にくぐって出てきたよ」
    「アレの脇の下くぐんのが普通か……?」
    「ふぅ、囲まれた時はどうなることかと思った。モリィとノイル、お前たちには後で話があるからな」
    「思ったより落ち着いてますね。どうやって抜け出してきたんです?」
    「腹が痛くてそれどころじゃないって言って出てきた」
    「やるね、目の前で脱糞しても愛してくれる女性以外を蹴落とすというわけか」
    「なるほど。勉強になる」
    「絶妙に嫌な言い方をするな、流れるように荷物を返すな、カイゼはそんなこと勉強するな!」



    ◆◆◆Look out: Lv.5◆◆◆

    「あれ? そこのお皿の下、なにか挟まってる。クロードの前の」
    「ん?……ああ。さっきの給仕が置いていったメモみたいだな」
    「ちょっと、皿の下に挟み直さないでくださいよ。何が書かれてたんです?」
    「夜中に宿の空き部屋で待ってるってさ。紙が放置してあれば行くつもりは無いってわかるだろ、待ちぼうけさせるのも悪いし」
    「声を落として。あの給仕がまた来る」
    『こちらチーズ入りオムレツです』
    「あ、俺の……えっ」
    「カイゼを完全に無視してクロードの前に皿を置いていった。またなにか挟まっているね」
    「……ハーブティーと茶菓子、かわいいぬいぐるみもたくさんあるってさ。え、これ何の誘いなんだ?」
    「なんのって、そりゃナニの」
    「騎士様それ以上いけない」
    「また来たよ!」
    『こちらチーズ入りオムレツです』
    「えっ、あ、俺の……?」
    「またクロードの前に置いた! すごいよこの人!」
    「お嬢様シッ! 興奮しないで、ご本人に聞こえます!」
    「なになに。へぇ、安定した衣食住もあるらしいんだが」
    「なかなかの甲斐性だ。一晩で終わらせる気はないようだね」
    「もう行ってやれよ。クロードはバケモンに殺られたって報告すりゃいいだろ」
    「何も良くない! 騎士が虚偽報告を提案するな!」
    『こちらチーズ入りオムレツです』
    「さすがに三つは頼んでないんですけどねぇ」
    「クロード前が真っ黄色になってるね」
    「なんと夢と希望まであるらしい。あんまり言いたくないが、これもうネタ切れなんじゃないか?」
    「いや、本気で君の人生を彩るつもりかもしれない。次のチーズ入りオムレツで見極めよう」
    『こちらチーズ入りオムレツです』
    「カイゼ食べれる? お腹もちもちにならない?」
    「心配いらない、俺は頑丈だから。それで今回の内容は?」
    「……か、代わりに俺のすべてを奪うって書いてる……」
    「急に怖ぁ?!」
    「情熱的ともとれるね。それで? 女性にそこまで言わせた君はどうするのかな?」
    「だ、誰か……誰か火を貸してくれ。この怪文書を葬り去る。はっきり意思表示しないと寝ている間にやられる気がする」
    「殺られるっつーか、ヤられ」
    「それ以上いけない。喋らなくていいから君は食べてなよ」
    「残念ながらこの場にある火は天井から吊るしてある照明くらいですねぇ」
    「く……ッ!」
    「……クロード、すまない、食べている皿の下に挟まないでもらいたい、オムレツが傾いている」



    ◆◆◆Smash-crack: Lv.6◆◆◆

    『いっけなーい! ひほふひほふ〜!!』
    「ぐあぁあっ?! ごほっ……わ、悪い、大丈夫か」
    「すごい。絶対あっちから全力でぶつかってきてたのに謝って心配してあげてる」
    「お人好しですよねぇ。音からして肋骨くらいいっててもおかしくありません。後でクロードを診ましょうか」
    「しっかし、あの勢いで突進されて受けきる体幹見てっと、やっぱ農作業ってめちゃくちゃ体鍛えられるんだな〜って感心するぜ」
    「個人的にはかわす能力を鍛えたほうが良いと思うけどね。ご覧よ、今の絶叫で全員振り向いたよ」

    「……え? さっきくわえてたチヂミが父親の形見? 賠償金は金貨五十枚……?!」
    「ちょっと、そこでこっちを振り向かないでください? ありませんよそんな大金」
    「本で読んだ覚えがある、これが当たり屋か。実物は初めて見るが……奇天烈だ」
    「すごい注目されちゃってる。どうしよう、私たち離れてた方がいい?」
    「大丈夫、ドロシーの後ろに隠れておいで。……お嬢さん、友人がすまないことをしたね。あいにく僕たちに君の悲しみを埋められるほどの持ち合わせはないんだ。だけど代わりに、金で手に入らないものなら与えてあげられる。……そんなものあるのか、という顔をしているね。ふふっ」
    「くっ……先の展開は読めたのに激痛で逃げられない……!」
    「それは──愛だよ、お嬢さん。このクロードなら君に極上の人生を提供できる。どうだろう、それで手打ちにするというのは」
    『えっ嬉しい! 美男狙って良かった……!』
    「提供できないできるわけがない、俺の一生はチヂミと等価か?! あと今狙ったって言ったよな?! 狙ってたのか、チヂミくわえて爆走しながら?! 俺を?!」
    「つまりこれもナンパってこと?!」
    「ユヒルどうどう、前に出んなって」
    「やっと理解できた。彼女が真に求めていたのは富ではなく愛情だった、ということか……」
    「カイゼ様、しんみりなさってるところを邪魔したくはないんですが風でフードがめくれてます」
    『えっ……悪魔憑き?! きゃー!』
    「うお……土埃すげぇ。ユヒル、目に入んなかったか?」
    「う、うん。すごい蛇行しながら走っていったね、あと足速いねあの人」
    「愛を得るための道は曲がりくねり一筋縄ではいかない、ということか……」
    「カイゼ様、今の爆風でますますフードが。浸らせて差し上げたいんですがまずはフードを直しましょうね」



    ◆◆◆It's an invasion: Lv.7◆◆◆

    「さて。宿に入る前に解決しなくてはならないことがあります」
    「そうだね。一人多いよね。女性はユヒル一人のはずなんだけど」
    『……』
    「おいクロード、横にくっついてるソイツ元の場所に返してこいよ」
    「お前は子どもが猫を拾ってきた時の母親か! 俺は拾ってないっ」
    「いつの間にか一緒に歩いてたよね……。たまたま道が同じなのかなって思ってたけど」
    「今この場で立ち止まっているということは、行動を共にする意志があるとみて間違いなさそうだ」
    「なるほど。何をしてくるわけでもなく横を歩いていただけ。だからこそ追い払うために自分から働きかけることもできずにここまで連れてきてしまった、と。ちょっと優柔不断じゃありません?」
    「ぐ……この際それは認めるよ。なんとかしてくれ、優秀さは折り紙つきの魔女様だろう」
    「え〜、俺がお嬢様以外の対人関係で仕事をするとでも?」
    「見事な論破だ、ドロシー」
    「けどどーすんだよ、このままじゃ宿の中までついてくんぞ」
    「はぁ。……なぁあんた、見たところこの街の人だろ。どういうつもりなのか聞かせてくれないか」
    『……一目惚れした。貴様に』
    「……っ!!」
    「ユヒル、大声を我慢してくれてありがとうな。背後からの熱気がすごい」
    「お嬢様、元々恋バナお好きですもんねぇ」
    「レンガ道を初めて見た時と同じ、輝く瞳をしているね。ユヒルにとっては心躍る非日常というわけか」
    「つーか貴様っつったなコイツ」
    「ああ、不遜な二人称だ」
    『……なる気はないか。恋人に』
    「妙に渋い雰囲気の倒置法が気になって恋愛どころじゃない。悪いが帰ってくれ」
    『……ほう? 望むか。それを』
    「俺は今街の娘さんと話してるよな? 実は魔王か何かに取引を持ちかけられてるわけじゃないよな? 肯定するのをためらうんだが!」
    「早く話をつけてくれないかな。宿の前まで来てこれ以上時間を取りたくない」
    「悪いのは俺なのか?! くそ……、の、望む。もう一度言うが帰ってくれ」
    『いいだろう。叶えよう……今はな』
    「──ほ、ほんとに帰っていった。そういえばあの人、ずっと足音がしなかったね。不思議な雰囲気だったな……」
    「ふふ。対価も聞かずに望みを叶えてもらって、我らが色男はこれからどんな運命を辿るのかな」
    「怪談風にまとめるのはやめてくれ……」



    ◆◆◆The horde is coming: Lv.8◆◆◆

    「なんだ……? 地響きが」
    「街全体が揺れているようだ。ユヒル、俺のそばに」
    「地震じゃない? そんなに警戒しなくても」
    「この国ではほぼ起こらないんですよ、お嬢様」
    「これは──足音だね。あっちの方向から……なっ、」
    「は。やっ……べぇ! カイゼ様とユヒル! 建物の隙間に! 走れ!」
    「えっなになに、え?……わぁ! ヌーの大群だぁぁあ!!」
    「この国にヌーの群れはいないんですよお嬢様! あれは人間です!」
    「オマエらも早く逃げろ! 轢かれたらミンチになっちまう!」
    「あそこの梯子から屋根の上に登れる。クロード、急ごう」
    「ああ! よし、流石に屋根の上にいれば安全だな。……ん? なんで全員壁をよじ登り始めて……まさか」

    『時は来た! 迎えに来たぞ、恋人よ──!』

    「は、わ、ぎゃああっ?! 天から声がする?! まさかこれが昨日の対価なのか?! モリィが洒落にならないことを言うから!!」
    「今は揉めている場合じゃない! 走るよ!」

    「……皆、屋根の上を走って行ってしまった」
    「全員目が血走ってやがった……アイツら逃げきれんのか?」
    「まあ走りながら考えられる二人ですから、何か有効な策を講じて無事帰ってくるでしょう。俺たちは……買い出しを済ませておきますか」
    「ま、そうしとくか。ちょうどそこの店に切れてた品があるぜ。うっし、ドロシー」
    「財布がほしい時に名前だけ呼ばれるの、複雑ですねぇ……」
    「結構な超常現象が起こってたと思うんだけど、スルーなんだね」
    「俺も異常性は感じたが、クロードがとても魅力的だから、で説明できてしまう……」
    「そ、そっか……そうかも……」



    ◆◆◆Incoming: Lv.9◆◆◆

    『それでね、あなたを見た時にピンと来たの。あ〜わたしこの人と結婚するんだ〜って! 両親もそんな感じだったらしいのよ、会った瞬間から直感で結婚相手だってわかってた〜みたいな! そういう血統なのかしらね、運命の相手は見ればちゃんとわかる第六感が備わっているみたいなの。わたしにとってはあなたがそれなのよ。だからわたしあなたのお名前が知りたいのね、教えてくださらないかしら』

    「なるほど。もう他人とは思えなくなるほど喋り続けていたが、要約すると君の名前が知りたいらしい」
    「飼ってる猫ちゃんの名前とかほくろの数とか小さい頃にハマってた遊びとか全部聞いちゃったね。どうするの?」
    「いや……名前くらい教えたって構わないよ、構わないんだが。それを言われるまでの時間が俺に “ 言うな ” と囁いてるんだ」
    「いい判断力だね。うん、教えずに立ち去ろう。こういう手合いとは関わらない方がいい」
    「いつもだったら面白がるのに今日は慎重ですねぇ」
    「街中追っかけ回されたのがよっぽど響いてんだろ。最終的に水に飛び込むことになって珍しくブチギレてやがったし」
    「濡れたくないんだよ。濡れたことを思い出したくもない。当分クロードと二人行動はしないと誓ったよ」
    「あっ、おい!」

    『あらあなたクロードさんって言うのね! クロードさん、クロードさん。ええ、ますます確信が深まったわ、旦那様になる方のお名前で絶対に間違いない感じ! 結婚を前提にお付き合いしてほしくて、そのために旅を取りやめてこの街にずっと居ていただきたくて、そのためにこの街で仕事を見つけていただきたいのだけれど、いかがかしら? あっおうちは父に頼んでどうにかいたしますからご心配なさらないで!』

    「俺は何も言ってないのに竹よりも速く話題が成長していくぞ、どうなってるんだこれ。目眩がしてきた」
    「クロードしっかり。本気の女性だよ、独特だけど」
    「ああ確かに本気かもな。巡り会ってわかったが俺に結婚は早いよ助けてくれユヒル」
    「モリィらしくもないミスですね。本当に調子がよろしくないようで。後で診察しましょうか?」
    「お心遣いだけで十分だよ。それよりクロードがユヒルに抱きついてるのはいいのかな」
    「良くはないので後で刺すんですが、展開的には良いかもしれないので見守ります」

    『そちらの女性はどちら様? ずいぶん親密にしてらっしゃるのね、わたしにもご紹介いただきたいわ! 妹さんか何かなのかしら、それとも昔からの小間使いさん? わたしとお付き合いをはじめてからも同じ距離感だとちょっとだけ困るのだけれど離れていただくことって可能かしら?』

    (……! ユヒル、合わせてくれ)
    (え……?)
    「こいつは俺の婚約者だよ。いつもこれくらいの触れ合いはしてるから近いって言われて驚いた。な、ユヒル?」
    「うーんそれは確かに……? 野営だと寝る時も結構近いかな」
    「よしいいぞ最高だ……! とにかくそういうことだから、あんたの伴侶にはなれないよ。俺の運命の相手はこいつ以外有り得ないから、直感とやらも勘違いだ。悪いな」

    「……イキイキしてんな。喋るたびにドロシーが素振りしてっけど」
    「僕はユヒル側の感覚も問題だと思うけどね。総出で甘やかしすぎたかな」
    「総出っつーかオマエとドロシーな」
    「最たるのは君だよ。無自覚が一番目も当てられない」
    「俺からすると、皆がそうなんだが……」
    「カイゼ様はっ、最大濃度が低い代わりにっ、持続時間が随一なのでっ」
    「お、俺も刺される……?!」
    「よしよしカイゼ。二人で留守番させてるのはドロシーなのにね」
    「やっぱモリィだろ、ユヒルとカイゼ様の感覚歪めてんのは」
    「心外だなぁ。ねえカイゼ?」
    「だから頬ずりすんなって!」



    ◆◆◆The Scourge: Lv.10◆◆◆

    「お嬢様、今何か隠しました?」
    「えっ! う……内緒なんだけど、ドロシーにならいいかな。実は、さっき街を歩いてる時にクロード宛のお手紙を預かって」
    「なんだ? 果たし状か?」
    「色気のない発想だね。普通に考えて逢い引きのお誘いだろう」
    「逢い引きの誘い……。なぜだろう、まともな手順を踏んでもらえたと思うと胸が熱くなる」
    「カイゼ様、お気持ちわかります……っ」
    「というか、内緒でクロードに渡そうと思ってたのにみんなに聞かれちゃった」
    「俺にも聞こえてるぞ。ちなみに俺は目頭が熱い」
    「男泣きですねぇ」
    「は、ハンカチ使う? それとはい、お手紙」
    「なんて書かれてるんだ?」
    「いや、読み上げるのは相手に失礼──、は?」
    「どうして固まるのかな、恋文くらい慣れてるだろうに。ちょっと、無言で押し付けないでほしいな。なに……『明日早朝、街外れの伝説の木の下にて釘バットを持って待つ』」
    「果たし状だこれ!!」
    「釘バットは間違いなく果たし状ですねぇ!!」
    「どーすんだクロード。今からだと釘売ってる店見つけられっか怪しいとこだぜ」
    「なんで気にするところが釘バットの調達可否なんだ! あとなんでバットは持ち歩いてる前提なんだ?! そんなもん無い!」
    「皆、落ち着くんだ。クロードも釘バットを持ってくるようにとは書かれていない。それに、正しくは『明日早朝♡ 街外れの伝説の木の下にて♡ 釘バットを持って待つ♡』だ」
    「か、カイゼ様が語尾にハートを……」
    「演技力が高くて可愛いね。可愛いよねドロシー?」
    「アッハイ」
    「送り主の情緒がわからなすぎる」
    「ユヒル、どんなヤツだった? なんもされてねぇよな?」
    「普通の綺麗な女の人だったよ。あ、でも袖がズタボロで腕はムキムキで血痕がついた釘バット持ってた」
    「それは普通とは言わないんだユヒル!」
    「で、どうするんですか。大鎌で参戦します?」
    「叩き折られそうだな。懐に入られたら殺られちまうしナシだ」
    「いや手ぶらで行くのはもっと無しだろ。なんならお前の部分鎧も貸してほしい」
    「ソレでオマエが安心すんなら貸してやってもいいけどよ……。ん? 手紙の裏の隅っこ、なんか書いてねぇか」
    「『勝ったほうが負けたほうをお嫁さんにする♡』」
    「ぐわぁカイゼ様! なんで俺の耳元で言うんですか?!」
    「すまない、悪戯心が顔を出して」
    「お茶目で可愛いね。可愛いよねドロシー?」
    「アッハイ……」
    「あ! わかったよ!」
    「ユヒル、カイゼがちょっと浮いたぞ。どうしたんだそんな大声出して」
    「ご、ごめん。ラブレターを渡す時に別の人の血痕ついたままのバット持ってくるかなって不思議に思ってたんだけど」
    「着眼点が斬新すぎる! 学会でも遠巻きにされる斜め上の発想だぞそれは!」
    「今裏面を見て、結婚と血痕をかけて験担ぎしてたんだなって……思って……」
    「ああぁ悪い自信をなくさなくていい、間違いなく研究者には向いてるから! 俺の言い方が悪かった、天才的だって言いたかったんだ、俺はその説を支持するよ」
    「で? どうするんですか、クロード。行った時点で結婚確定ですけど。夫か妻の二択しか許されてませんけど」
    「不戦勝不戦敗って言葉もあるぜ」
    「本格的に逃げ場がないじゃないか。どうもこうも、結婚は双方の合意があってするものだろ。こんな手紙まともに取り合う必要性はないよ」
    「その割に大騒ぎしてたけどね。まあ放置でいいんじゃない。下手にやりとりして契約成立してしまうのも厄介だ」
    「オマエ……よっぽど前の街のことがトラウマなんだな」
    「とりあえず明日は日が昇る前に街を出ましょうか。夜逃げです夜逃げ」
    「え〜……せっかくお手紙くれたのに」
    「相手と、仲介してくれたお前には悪いと思ってるさ。だがこればっかりはな。今は刑務中だし、そういう意味で誰かを好きにはなれないよ」
    「そっか……。それもそうだね」
    「そうと決まれば今日は早めに休もう。皆、おやすみ」








    ◆◆◆

    「ん? アンタさん、旅人かい? この街の名所が知りたいって、知らずに訪れるような街でもないと思うがね。そんなモンあの場所に決まっておる、街外れの伝説の木じゃよ。その下には釘バット乙女の石像があってのう、自前の釘バットで殴りかかると恋が叶うと言われてるんじゃ。その昔、一目惚れした相手を待ち続けた健気な乙女が実際におってな。……何を隠そう、ワシの妻になってくれた女性じゃよ。堂々たる一途な待ち姿にワシが一目惚れしちまっての。ホホホ……そんなひとをどうやって横から口説いたか、じゃと? そらもう、コレ一本よ」
    ────釘バットを担いだ老人の談
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    💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖👏👏👏
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    あさい

    MOURNINGごちゃまぜ没BOXに廃棄に行ったら目についた断片があったのでぽいっとします
    刀(つるさに)
    なんのことやらわからんまま始まって終わる
    遡行し続ける鶴丸といつも救えない彼女、その一回目の追憶 故人のことは声から忘れていくというが、俺はそれが嘘だと知っていた。何度も時を遡り、この体の齢が数百を数えようとも、俺は覚えていた。声も言葉も記憶から消えはしなかった。少し震えて、常よりかは上擦って、珍しくこちらを真っ直ぐと見ながら唇をひらめかせた女の。
    『墓の下はどんなですか、鶴丸。私の知ってるこことどれだけ違いますか』
     いつも緊張に体を固くして、青白い顔をしていた。最初の彼女は本丸から一度も出ずに亡くなった。二十五年生きて、一度たりとも箱庭の外を見なかった。女の世界は動かぬもので埋め尽くされて、ぴたりと整った景趣と刀剣男士たちとがすべてだった。動くものといえば己くらいだろうかと思うと、残酷な動揺がよく胸をときめかせた。女の世界の、おそらく九割ほどを自分が占めている実感は快いものだった。まるで刀のような人生だったと思う。使われない限りは永劫にしまい込まれて、しかし錆び朽ちぬようにと命だけは守られて、まんじりともせずに目をひらいているしかない置物のような。女は生まれた時から人間だったけれども、人もどきの刀よりよほどつまらない人生を送っていた。「人生を送る」という積極的な言葉が似つかわしくない、座敷にぽつねんと置かれているだけの女だった。
    1372

    あさい

    MAIKINGこんな感じで本になるくらい書き連ねようか没にしようか迷い中のオールキャラほのぼの(未添削)

    今思っていること:「ほのぼの」を冗長であることの逃げ言葉として使うな
    PrisonLogbook 刑務の旅が始まって何日目のことだっただろうか。
    廃墟を目指してひたすらに歩き続け、日が傾けば良い場所を探して野営をする。とにかくそれを繰り返しと感じられるようになった頃合いのことで、かつ、まだどこの宿場にもたどり着いていない夜のことだったので、三日目か四日目くらいだったかもしれない。
     ドロシーの案内により今日も今日とて獣道に突っ込んだ一行は、あちこちに擦り傷を作りながらも穏やかな夕方を過ごしていた。
     人目を避けて街道を外れた森の中。巣へ戻っていく鳥たちの羽ばたきがいずこからか聞こえ、それを追いかけるような木々のざわめきが鼓膜の深いところを安らがせる。
     ユヒルは焚火から少し離れた倒木に腰かけ、まったりと涼やかな風を受けていた。ペースに気を遣ってもらえるおかげで一日歩きどおしでもどうにかやれているが、やわらかい足の裏だけは数時間も経つと痛くて痛くて、こうして座るだけでかなり楽になる。靴を脱いで風に当てると、体重と地面の衝突を歩数のぶんだけ受け止め続けて赤くなっていた足裏から余計な血が引いていくような心地がした。
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    廃墟を目指してひたすらに歩き続け、日が傾けば良い場所を探して野営をする。とにかくそれを繰り返しと感じられるようになった頃合いのことで、かつ、まだどこの宿場にもたどり着いていない夜のことだったので、三日目か四日目くらいだったかもしれない。
     ドロシーの案内により今日も今日とて獣道に突っ込んだ一行は、あちこちに擦り傷を作りながらも穏やかな夕方を過ごしていた。
     人目を避けて街道を外れた森の中。巣へ戻っていく鳥たちの羽ばたきがいずこからか聞こえ、それを追いかけるような木々のざわめきが鼓膜の深いところを安らがせる。
     ユヒルは焚火から少し離れた倒木に腰かけ、まったりと涼やかな風を受けていた。ペースに気を遣ってもらえるおかげで一日歩きどおしでもどうにかやれているが、やわらかい足の裏だけは数時間も経つと痛くて痛くて、こうして座るだけでかなり楽になる。靴を脱いで風に当てると、体重と地面の衝突を歩数のぶんだけ受け止め続けて赤くなっていた足裏から余計な血が引いていくような心地がした。
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