「いやなに、マッチングアプリというものを始めてみたんだけど、これがなかなか楽しくてね!それより相澤くん、次の飲み会の出欠は出したかい?」
相澤が衝撃のワードを反芻しているうちに、元ナンバーワンヒーローが少しの躊躇いもなくその画面を差し出してくる。果たして見てもいいものなのかいまいち判断のつかないまま、相澤は促されるまま視線をその画面へと向けた。
「今回もまた私がお店を選ばせてもらってね!この前は皆を少しびっくりさせてしまっただろう。だからリベンジさ」
かつてのマッスルフォームを彷彿とさせる笑みに、キラ、と白い歯が光る。画面に映し出されていたのは、なんてことのない大手グルメサイトの一ページだった。
その言葉に、豪奢な造りの料亭での一幕が思い浮かぶ。見たことも聞いたこともない料理が次々と運ばれ、そういうものをあまり気にしない質の相澤でさえ緊張で箸が進まなかった。無論、会話も全く盛り上がらなかった。
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