〜彼女を1人にできない理由〜 「あぁ、なんて甘い香りなんだ……!!」
目の前の男は、はぁ、と息を吐いた。この男も私の香りに魅了されてしまったらしく、さっきから目の焦点が合っていない。早く逃げなきゃと思っても両手は壁に縫い付けられて動けない。こんなことなら彼の言う事を聞いていればよかった……。
ギリッと唇を噛む。
(……ごめんね、悟君)
危ないから外に出ちゃダメだって忠告してくれたのに……。それでも外の世界に憧れて。内緒で出たら案の定、捕まってしまった。
「中はどうなっているのかな?」
ヘヘッとゲスい笑みを浮かべた男は、手を服の中へ。ゆっくりと上に這っていくその手にゾワッと鳥肌がたった。
(……っ、いや!!悟君!!)
下着の中へと入ろうとした瞬間、ドオンッ!!!と爆発音が。激しい突風に、目を閉じていると身体を這う手が消えた。
(……ぁ、)
ふわりと漂うにおい。
「……悟君」
顔をあげると、そこにはやっぱり彼がいて。
小さく息を吐いたあと、私の頬に手を添えた。
「だから言ったでしょ〜。お前の香りは呪霊だけじゃなくて、呪詛師も惑わすから危ないって」
安心したからか溢れてくる涙。それを拭いながら、うんと頷いた後、ごめんねと謝る。
優しい声で「いいよ」と返ってきて。これでもう大丈夫だ、と安心しきっていると、私を横抱きにした彼は言った。
「におい、結構溢れちゃってるから急ぐよ」
「……え、」
「なに?お前、気づいてないの?こんなに甘い香り撒き散らしてるのに」
そんなことを言われてもサッパリわからない。
まあ、いいやと呟いた彼は、とりあえず頑張ってねと軽い口調で言った。
「お前のソレ、いつも以上にヤバいから多分3回じゃ鎮まんないと思うよ」
「え……、」
言っている意味がわかり絶句。
気づいたら部屋に戻っていて。ベッドに縫いつけられた。
「途中で意識飛ぶと思うけど、叩き起こすから」
そう言って、悟君は首に顔を埋めた。
おわり。