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    野々日

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    野々日

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    オンたまおめでとうございます伊食満小話 小説

    #小説
    novel

    ■ ■ ■ ■ ■ ■




     しまった。初夢まだ見てないのに、宝船の絵、用意するの忘れてた。
     
    「……」

     まだ冷たい布団の中でごろりと寝返りを打つ。いや、別に、冷静に考えたら大したことじゃない。そりゃあ確かに物心ついてからというもの欠かしたことはなく、いつもバッチリ枕の下に引いてバッチリ色んな忍者を打ち倒す夢を見てバッチリ目覚めてから一年を始めている。悪夢なんて見たこともないし、そのおかげで去年一年も悪くなかったと思っているが――いや違う、別に夢のせいじゃない。普通に俺がよくやっただけだ。夢見だって別に普段から悪くない。どうせ絵を一枚入れるかどうかだ。気分だけだ。いい夢が見られるに決まっている。支障はない。納得したらよく眠れそうな気がしてきた。よし、寝よう。

    「………」

     今日家出てくる時、あの絵どうしたんだったか。布団はちゃんと畳んで出てきたから、絶対どこかに置いた覚えはあるはずなのに全然思い出せない。服の中に紛れている?いやそんな筈もない。ちゃんと持って来なきゃと思っていた、筈だ、確か。今朝起きた時は。もしかして先に無意識で入れた?荷物を開いてみようか。いやだが、もう伊作も寝ているだろうし。布団の中はもう随分暖かくなったし、外は寒いし、体を冷やしたらそれこそ夢見が悪くなりそうだ。寝よう。

    「……………」

     本当は荷を解くのも今日やるべきだったんだよな。もしかしたら他にも忘れものをしているかもしれないし。布団だってきっと別に冷めないし、あるかもないかもと気になっていてはとても眠れそうにない。
     ほんの少し。ほんの少し確認をしたら、すぐ眠ろう。
     そうっと爪先をつけた床は凍りそうに冷たい。灯りを増やす間も惜しく荷を開いた。中身を片っ端から引っ張り出すが、一向に紙の音も手触りもない。服の間に隠れているのだろうか、とばさばさ振っていると、小さく唸り声が聞こえた。しまった、起こしたか。

    「…なに、とめさぶろ、おきてる…?」
    「悪い、もう終わるから」

     ふああと欠伸をしながら起き上がった伊作は、まだ起ききっていないのかふにゃふにゃと首を傾げる。

    「眠れないの?」
    「あ、いや、その」

     たかだか絵が一枚無いのが気になって仕方ないなんて言えない。慌ただしく荷を結んで戻ろうとすると、不意に伊作が手を伸ばしてきた。

    「ん」
    「………?」

     なにが、ん?だ。
     何か持っているのかとも思ったが伊作の手は大きく開かれている。寝惚けてるのだろうか。すると伊作は焦ったそうに俺の方に寄ってきてぐいと腕を引いた。

    「しかたないなぁ、ほら、おいでってば」
    「は?おい、伊作」

     そのまま自分の布団に俺を引き込んで、腕と足が絡んでくる。ちょっと外に出ただけで冷えた手足に伊作はちいさく悲鳴を上げて、温めるように擦り付いてきた。そうしてそのまま腕枕でもするように首に巻きついて、ぽんぽんと背中を叩く。

    「ぼくに息合わせて」

     息を合わせるって、寝かそうとしてるのか。こんな狭い布団で寝てたら風邪を引きそうだ。しかし抜け出そうとしたらぐうっと足も腕も締め付けてくる。そのまま少ししたらすうすうと寝息が聞こえてきた。

    「………」

     腕の力が弱ったのが分かった。だが、わざわざ今から起こすのも少し忍びない。大人しく目を閉じることにした。
     伊作の言っていた通り、出来るだけ変なことを考えないように、息を吸って、吐く。息を合わせるんだったか、と思い出して意識すると、意外と自分の息が早いことに気付いた。
     伊作が吸う。追って俺も吸う。
     伊作が吐く。俺も吐く。吐き切って吸う。
     伊作はまだ吸わない。一拍遅れて付いてきて、俺が吐いた二拍後に吐く。
     沢山吸えばいいのかと思い切り吸って静かに吐く。今度は俺の方が遅れる。…思ったよりも難しい。
     こんなの集中してたら逆に目が覚めそうだなと迷いながら吸って、吐いて、吸って、吐いて。なんとなくふんわりと暖かな気分になって、また吸って、吐いて。

    「………」
    「と、留三郎」
    「………んあ?」
    「留三郎、寒いよ、布団返して」
    「…ふとん……あっ⁉︎うわ、悪い!」

     窓から見える空の端はうっすらと明るい。ガタガタ震える伊作に独占していた布団を半分明け渡してやると、すぐに入って蕩けた顔をした。

    「はああ、あったか…起きたらめちゃくちゃ寒いんだもんな、ビックリした」
    「いやほんと悪い、もっと早く起こしてくれたらよかったのに」
    「いいや。よく寝てたから」

     ほうっと一息ついて、伊作は強張っていた口角を緩める。

    「いい初夢見られた?」

     腕の中の悪戯っぽい笑顔と目線がばちんと合う。一瞬なぜだか、息が詰まった。

    「…覚えてない」
    「そうか、じゃあ明日に期待だね」
    「お前は?見られたのか」
    「留三郎が眠れなくて途方に暮れてる夢なら」
    「暮れてねえよ」
    「ほんとかなぁ」

     伊作はくつくつと喉で笑って、子供がするように俺の胸に頭の天辺を擦り付けてきた。

    「僕あんまり夢見ないからさ、いい夢見たらお裾分けしてよ」

     夢のお裾分けってなんだよ。言ったからって分けられるもんでも無いだろうに。

    「なら、宝船の絵描いてくれよ」

     なんとなくそうした方がいい気がして、そう伝えてみる。腕の中の男はきょとんと目を丸くした。

    「いいけど、僕別に絵上手くないよ」
    「いいんだよ。お裾分け欲しいんだろ」
    「そうだけどさ。…まあいっか」

     なんか珍しいね、と不思議がる伊作と一緒の布団に入ったまま、うとうとと目を瞑る。起きてしまった伊作よりもゆっくり息をする。そのズレが妙にあたたかくて、何も考えずに意識を手放した。
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