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    ももいろ

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    ももいろ

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    綾がリツにパンケーキ作ってあげる綾リツ
    多分付き合ってる

    今日はリツキの家に行く日。スーパーに寄ったら苺が山積みにされていた。
    季節か、と思うと同時に「これ買って帰ったらリツキ喜ぶだろうな」と考えていて気づけばカゴに入れていた。
    練乳は一度手にとったけど戻した。多分めちゃくちゃ喜ぶと思うけど苺が見えなくなるくらいかけそうだから。苺一パックでこのチューブの練乳全部使いきるんじゃないかって思う。流石に糖分のとりすぎだと思った。
    そう思っていたのに練乳を買わなかったことを忘れて、喜びそうだなと思ってそのまま使えるホイップクリームはカゴに入れていた。何してるんだ俺は、クリームのが脂質が多いからカロリー高いだろって思ったけど気付いたときにはレジだった。

    家に着いて冷蔵庫に食材を入れていたら案の定リツキが食いついてきた。

    「苺じゃん」
    「ああ、売りだされてたから」
    「生クリームもあるじゃん!絶対うまいやつ〜!」

    子供みたいに目を輝かせてはしゃぐ姿に、買ってよかったなって素直に思う。

    「ね、パンケーキ作ってよ。ふわふわのやつ。乗せたら絶対うまいじゃん」

    唐突だった。しかも簡単そうに言う。
    たしかに料理は得意な方だけどお菓子はあまり作らない。プリンとかゼリーみたいな混ぜて冷やすだけのやつならやったことはあるけど、それだって数えるほどだ。

    「…」

    俺は何も言わずにソファに腰を下ろした。リツキは「え?無視?」って言いながら俺の隣に座る。

    「あれ、もしかして調べてんの?」
    「…作り方分からないからな」

    スマホを手にパンケーキの作り方を検索する。動画をいくつか開く。リツキも興味津々で見ている。

    「へぇ、簡単そうじゃん」

    どこがだよ。メレンゲの泡立てとか、火加減とか、ちゃんと膨らむのかとか、正直、不安しかない。けど口には出さなかった。

    「ハンドミキサーがない。それに材料もそろってないからまた今度な」
    「え〜まあいいよ」

    少し不満そうだけど納得したみたいだった。
    リツキに中途半端なものを食べさせたくない、ちゃんと作れるようになってから食べさせたかった。

    その日から時間がある朝食はパンケーキを作った。初めはメレンゲを生地を一緒にするときに混ぜすぎてしまったり、火加減が難しくて思うように膨らまなかった。でも、週に何度か試しているうちに、少しずつコツがつかめてきた。

    オフの日、昼前にリツキの家に着いた。買ってきた食材を冷蔵庫にしまっていると、リツキが後ろから顔をのぞかせる。

    「それパンケーキの材料?パンケーキ作る?」

    声のトーンが一気に跳ね上がる。

    「おやつの時間にでも作ろうと思って」
    「え〜昼ごはんでよくない?パンじゃん。ごはんでしょ、ごはん」

    言うと思った。俺は「別にいいけど」とだけ返してキッチンに向かう。余った食材はあとで作り置きにでもすればいい。
    パンケーキの準備を始めると案の定リツキがこっちを気にしながら近づいてきた。キッチンカウンターに並べた材料の中から、手を伸ばしたのは苺。

    「まだだって」

    つまみ食いされる前に苺のパックを取り上げて、水でサッと洗う。ヘタを取って皿に盛ってフォークと一緒に渡すと「わーい」って言ってソファで苺を食べに行った。
    ……これも想定済み。苺は余分に買ってある。

    ボウルに卵を割り、黄身と白身に分ける。白身に砂糖を加えて、泡立て器でしっかり泡立てちゃんとツノをたてる。黄身のボウルに牛乳と粉類を加えて混ぜて、泡立てたメレンゲを少しずつ加えて、潰さないように丁寧に混ぜ込んでいく。泡の感触を壊さないように、ゆっくり、優しく。
    フライパンを温めて、生地を高めの位置から落とすと、こんもりした円ができる。表面が少し乾いてきたタイミングでそっと重ねて、蓋をして蒸し焼きにする。

    「いいにおいする」

    リツキがそばに寄ってきた。
    フライパンの蓋をそっと開けて、きつね色に焼けた生地をフライ返しで持ち上げて一気に返す。……うまくいった。焼き目はちゃんとついてるし、潰れてもない。

    「すげぇじゃん!めっちゃうまそ〜!やっぱ綾斗なんでもできるな〜」

    あれだけ練習したからな。でもわざわざそれを言うのもかっこ悪い気がしたから黙ったまま火を止めて、パンケーキをそっと皿に移す。
    ふわふわに焼きあがった二段のパンケーキ。粉砂糖をふって、赤く熟れた苺をたっぷり添える。最後にホイップと、瓶詰めの苺ジャムを少し垂らす。

    「お店のやつじゃん」

    ほんとに感動してるような声だった。その顔を見るだけでこっちまで報われた気分になる。リツキはパンケーキを机まで運ぶと、スマホを構えて何枚か写真を撮り始めた。何度か角度を変えて撮って、満足そうに頷く。
    それから「いただきまーす!」と両手を合わせて、一口。

    「うっま!めっちゃふわふわ!店だせる、まじで」

    はしゃいだように喋って、もう一口、もう一口とどんどん食べ進めていく。
    幸せそうに食べる姿に練習した甲斐があったなって思う。

    「ね、次は苺のパフェ作ってよ」

    また唐突に、しかも当然のようなテンションで言ってくる。

    「……そのうちな」
    「ん〜」

    曖昧に返してもたぶん”そのうち”がそんなに遠くないことはリツキも分かってるんだろうなと思った。
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