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    ももいろ

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    パフェをつくるスズリツ
    多分同棲してる

    「ね〜スズヤ〜苺パフェ作ってよ〜」

    昼ごはんを食べ終えたあと、リツキさんが唐突にそんなことを言い出した。

    「いや、無理なんですけど。食べに行けばいいじゃないですか」
    「え〜今ちょっと忙しいし、外出るのめんどい。んじゃパフェできたら呼びに来て〜」
    「……え、ちょっと待ってくださいよ」

    僕の話なんて聞く気ゼロでリツキさんはパソコンと機材の詰まった作業部屋に籠ってしまった。……なんて自由な人だ。

    「はあ……」

    思わずため息がこぼれる。でもまあ、今日は特に予定もないし最近のリツキさんはずっと忙しそうで疲れた顔をしていることも多かった。ストレスも溜まっているんだろう。口数も減っていたし、やたら甘いものを欲しがるのもそのせいかもしれない。

    「……簡単なレシピ調べて作ってみるか」

    スマホで「簡単 パフェ 作り方」と検索して、いくつかのレシピに目を通す。

    「アイスと、生クリームと、スポンジ、ジャム、苺……これならいけそう。入れ物は……家にあるグラスでいっか」

    パフェの器なんて気の利いたものはないけど透明のグラスならあったはずだ。僕はそれを探して冷蔵庫にいれて、財布とエコバッグを持って家を出た。
    駅前のスーパーはわりと混んでいた。小さな子どもを連れた家族や主婦たちが行き交う中、ぼくは果物コーナーを見て回る。

    「苺高いな…」

    苺は小さなパックで798円。真っ赤でつやつやしていて見るからに美味しそうだけど値段が気になる。チョコバナナパフェとかでもいいかな…そう思ったけど脳裏に浮かぶのはファミレスで苺系スイーツを食べているときのリツキさんのやけに幸せそうな顔だった。
    結局躊躇いながらも苺をかごに入れた。アイスは無難にバニラ、あとはできあがったホイップとスポンジケーキを入れる。ジャムは家にあったはず。会計をしながら絶対食べに行った方が安いしおいしいのに、と思った。

    帰宅してから、僕はキッチンでしばらくスマホとにらめっこしながら、パフェのレシピを何度も確認した。
    不安になりながらスポンジケーキを四角く切って透明なコップにきっちり敷き詰めていたときだった。ガチャリ、と作業部屋のドアが開く音がして、足音がこちらに近づいてくる。

    「あ!作ってんじゃん!」

    リツキさんが嬉しそうにこっちに寄ってくる。

    「ちょっと、苺それだけしかないんであんまり食べないでくださいよ」

    僕がそう言うと、リツキさんは目をぱちくりさせてテーブルに置いてあった苺に伸ばしていた手を止める。

    「え〜いいじゃん一個くらい」
    「…一個ですからね」
    「やった」

    苺を食べているリツキさんから苺のパックを取り上げて苺を4等分にきってコップの縁につける。苺の大きさがちょっとバラバラな気がするけどまあいいか。

    「へ〜そうやって作るんだ」

    リツキさんは関心したように見ている。張り付けた苺が埋まるように生クリームを入れて、またスポンジケーキ、ジャム、クリーム、その上からアイスを入れる。

    「それっぽくなってきたね」
    「あとは生クリーム絞って苺のせたら完成ですよ」

    僕がホイップの袋を持ち直して上からぐるりと円を描くように絞っていると、リツキさんが横から口を挟む。

    「もっと生クリーム入れた方がよくない?その方が豪華じゃん、苺もたくさんのるし」
    「いやいや、これ以上は高さ的に危ないですって。倒れますよ」
    「え〜〜、じゃあ俺がやる!」

    そう言ってホイップの袋を半ば強引に奪って、てっぺんにぐにゃりと多めに絞り出した。

    「ちょっと!やりすぎですって!」
    「だってその方が写真映えするじゃん。」

    リツキさんはニッと笑って、切っておいた苺をつまみ食いしながら、そのまま飾りつけを始めた。が、どう見てもバランスが悪い。

    「一応こうやってこの向きで置いてくってレシピにはかいてあるんですけど」
    「そうなの?じゃあスズヤやって〜」

    あっさりと手を離して僕にたくしてくる。
    僕はできるだけ傾きを直しながら、レシピ通りの向きで苺をのせる。生クリームがすでに傾いてるからできるだけ倒れないように気をつけながら。

    「……完成しました」
    「お〜!やった!でも全然映ないな…」

    できあがったのは、アンバランスに生クリームと苺が乗っかった、やたらと背の高い即席パフェだった。グラスの縁は盛りすぎたホイップでふちどられ、そこに無理やり飾りつけた苺が今にも滑り落ちそうになっている。

    「だから言ったじゃないですか!クリームのせすぎなんですよ!」
    「え〜!スズヤの苺の飾り付けのせいじゃない?」
    「はあ!?」

    確かに苺の切り方も不揃いだし乗せ方も正直そこまで綺麗じゃない。でもそもそもリツキさんがクリームを山みたいに盛らなければ、ここまで崩壊寸前になることはなかったはずだ。

    「……まあいいです、倒れそうですしアイス溶ける前に食べてください。味は問題ないと思います」

    そう言ってスプーンを差し出すと、リツキさんは「やった〜!」と嬉しそうに笑ってパフェをすくおうとする。けど今にも倒れそうなクリームにどこから手をつけていいか分からずに結局手で苺をとってそれにクリームをつけて食べていた。

    「ん〜確かに味はうまい!」

    リツキさんは嬉しそうに苺を頬張って満足げに笑った。生クリームは少し崩れてるし盛り付けもあんまり綺麗とは言えないけど、こんなふうに喜んでくれるならまあいいか。

    「また作って〜」
    「いやです」

    即答するとリツキさんは「え〜」と子どもみたいに不満そうにいう。僕はちょっとだけ笑って言った。

    「落ち着いたらまた食べに行きましょ、苺パフェ」
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