1. 手をつなぐ1. 手をつなぐ
俺とおチビちゃんがオツキアイを始めてから一週間。今日は同期飲みだー、とかなんとか言って、キースもディノも出かけている。ウエストのリビングには俺とおチビちゃんだけが残されて、まぁ、イチャつくのに絶好の機会だ。メンターたちを送り出したところで、おチビちゃんが映画見ねーか、と誘ってきた。ちょっと顔が赤かったのはたぶん俺の見間違いじゃないと思う。
「いいけど、なんで急に?」
「え、っと、その、マリオンが時々ノースセクターの奴らと、ポップコーンパーティー? をしてるらしくて」
「あー、なるほどね」
ポップコーンとかチップスとかを持ち寄って、時々映画鑑賞会をしてるんだっけ。レンから聞いたことがある。
憧れの人と同じことがしてみたい、っていうのはちょっと分かる。本当はマリオンと一緒に見たかったんじゃないの、その映画。うっかりそんなことを考えてしまって、意地悪な言い方をしてしまう。
「俺とでいいの?」
「? いいに決まってんだろ」
何言ってんだ? って書いてあるみたいなきょとんとした顔。こういうとこ、敵わないなぁって本当に思う。こういう、本当にちょっとした一言が俺の中できれいな結晶になって、ずっと残っていくことを伝えたいような、黙っておきたいような。今はまだ恥ずかしさの方が勝るから、秘密にしておくね。
そうして、おチビちゃんが持ってきたのは少し古い恋愛映画だった。指摘すると怒るけど、おチビちゃんはちょっと子どもっぽいものが好きだからアクション系だろうと思ってたのに。誰のおすすめ? って聞いたら、それもマリオンだった。今度感想を伝えるらしい。
おチビちゃんがソワソワしている。正面のテレビを見て、それから顔は動かさずに視線だけをこちらに向ける。俺のことを盗み見てるつもりなんだろうけど、バレバレだよ。最初は集中してたみたいだけど、単調ぎみな展開に飽きてきたみたいだ。かく言う俺も、画面を見てる時間より隣に座るおチビちゃんを見ている時間の方が長い。
ソファに並んで座っていても、俺とおチビちゃんの間には一人分よりは少し狭いくらいの隙間が空いている。どちらかが少し手を伸ばせば触れられる距離。
何でもない風を装って、おチビちゃんの左手の小指がぴくりと動いた。そろりと俺の方に手を伸ばされて、触れそう、というところで俺は自分の手を引っ込めた。
「あっ!」
「アハハ、どうしたの? おチビちゃん」
「ふぁーっく! お前が手、引っ込めるから!」
「からかってごめんね。ほら」
今度は俺の方から手を伸ばす。指を開いてすり合わせ絡めると、おチビちゃんがぎこちなく手を握り返した。ほんとに慣れてないんだ。
「……あったかいね」
「お前の手が冷たいんだろ」
「じゃあ、あっためてもらおうかな」