アラビアンパロのせななる 今日もいつものようにきらびやかな衣装を着て踊る。美しいアタシ自身を見せつけて、お客さんからお酒を注がれて、チップを貰って。なに不自由ない生活だけど、それ以上も以下もない。お店の人は良い人だけど、ここにあるのは雇用関係だけ。おさない頃にこの旅団に拾われて、お金になるアタシたちは使い物にならなくなるまでここから逃げ出せない。
おまけにアタシ自身には特殊な『病気』にかかってるから、きっと死ぬまでこのまんま。
チップを握りしめたお客さんが、「注いで」とアタシにリクエストする。それにニコリと笑って見せて、空のグラスに唇を近付け、口の中に湧いた唾液をとろりと吐き出せば、こぼれ落ちるそれがみるみるうちにキラキラ光る宝石に変わっていくのだ。
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