独占欲と支配欲の話【せななるr18】泉ちゃんが日本に帰ってきときにエッチをする、というのは徐々に恒例化していて、なおかつ回数を重ねるたびにねちっこいものへと変わっていく。
「ちょっ、あぁっ!?まっ、……て、イってる、……からァっ!」
やめて、と叫んだところで無意味。強すぎる快感に頭がおかしくなって、びくびく体を震わせるアタシにおかまいなしに泉ちゃんは腰を打ち付けてくる。
泣きたくないのに涙が溢れて、だらしなく開いた唇の端から、口の中に溜まっていた唾液がとろとろ溢れる。そんなアタシを満足そうに見つめた泉ちゃんと視線が合って、再び覆いかぶさってきたかと思えば強く抱き締められたままに腰を打ち付けられてしまうのだ。
「っ、ぁあ、んッ〜!」
逃げ場がない。
これ以上されたらおかしくなっちゃう、そんな風に思ったところで泉ちゃんの唇に唇を塞がれてしまう。キスしながらのエッチに弱いアタシは思考をトロトロに溶かされて、結局アタシのほうからも泉ちゃんの唇に吸い付きながらその首に腕を回し何度も果てた。
***
「……さいていよォ……」
「なにが」
「んもう、泉ちゃんってば帰ってくるたびにこんなことしてたらアタシの身体が保たない」
しかもわりと高頻度で帰ってくるものだから、その度にこんなに激しいセックスに付き合わされるアタシの身にもなってほしい。
「嫌いじゃないくせに」
「あのねェ、好きとか嫌いとかじゃなくて、」
「はいはい。ごめんってば」
アタシの小言を、チュッ、だなんて可愛らしい音を立てたキス一つで黙らせて、それからさり気なくベッドの上に置かれた紙袋に視線を向ける。
「?なぁに、これ」
「お土産。昨日渡すの忘れてた」
さっさと服を着込んでいく泉ちゃんを横目に、お土産だと言われたその紙袋を手に取れば少しだけずっしりと重みが伝わり中を見る楽しみが増した。
「なに買ってくれたの?開けても良い?」
「いいよ」
いつの間にか服を着た泉ちゃんが、未だ裸のままベッドの上で座ってるアタシの横に座って一緒に手元を覗き込む。
「なるくんに似合うと思ったから」
袋から取り出したそれは、ガラス瓶に黒いリボンが巻かれた香水のようだった。
「やだ、可愛い」
「気に入りそう?」
「さっすが泉ちゃん、ありがと」
さっそく蓋を開けて、手首にシュッと一吹きする。手首と手首を優しく重ね合わせて、その後首筋にくっつけてみせれば全身に纏うように香水の香りがふわりと広がる。
「ふふ、いい香り」
思わずそう微笑んだ瞬間に、手首をぎゅっと掴まれるようにして再びベッドへと押し倒された。
「ちょっと、なによォ、もう!」
まさかまたエッチするつもりなの?いったい何にスイッチが入っちゃったって言うのよ、なんて身構えていれば、さっきまでのギラギラした泉ちゃんはもういなくって。
「毎日つけてくれるんでしょ?」
「え?」
「それ」
別に期待したわけじゃないけれど。
アタシの首筋に鼻を埋めて、跡にならない程度の甘噛みで吸い付いてくる姿は、拍子抜けしちゃうぐらい猫ちゃんみたいな可愛いものだった。
帰国するたびにしつこいぐらいアタシを求めてくることも、アタシに香水をプレゼントした意味も、ぜんぶこの人のマーキング、寂しさだとか独占欲みたいなものだと思うと途端に目の前の泉ちゃんが愛しくて仕方がなくなる。
自分で選んで日本から出て行ったくせに、ほんと泉ちゃんってば相変わらず勝手よね。
どこか大人びて変わってしまった雰囲気と、そんな中で変わらない部分を見つけ合わせては「やっぱり泉ちゃんは泉ちゃんよね」なんて当たり前のことを思い直してくすぐったくなった。
「泉ちゃん」
「なに」
すりすり。アタシに抱き着いたまんまの泉ちゃんの首筋に、回した手首を擦り付ける。
不思議そうな顔をして見つめてくる泉ちゃんに、「おんなじね」と笑ってから、同じ匂いがふわりと香るその首筋にチュ、と口付けた。
できればそばにいてほしいのも、見える範囲にいてほしいのもアタシだっておんなじよ。
だけどそんなこと格好悪くて言えるわけないから、泉ちゃんの活躍は雑誌だったりでしつこいぐらいチェックして、物理的な距離を誤魔化そうとしてる。
寂しい、なんて口から出そうになるのをぐっとこらえて、まだまだ素直に甘えられない代わりにその腰に脚を絡ませて、泉ちゃんをぎゅうっと抱き寄せた。
「ね、泉ちゃん」
「ん?」
「……やっぱりもう一回シましょ」
泉ちゃんが向こうに戻っちゃうまであと少し。今だけは、アタシだけの泉ちゃんでいてほしい、なんて。らしくもないことを思いながら、すっかりおとなしくなっちゃった泉ちゃんのそこを服の上から柔らかく撫で上げる。
「もう嫌なんじゃなかったっけぇ?」
意地悪な笑みを浮かべた泉ちゃんは、どうせアタシの寂しさだとかそういうのもわかってるんでしょうね。
「アタシのこと、大好きなくせに」
「そっちだって」
泉ちゃんが、夢ノ咲の空色の制服を着ていた頃には想像もつかないような甘い顔でアタシに囁く。こんな表情、声色ひとつだって、未だに慣れないアタシはそれだけでくすぐったくって仕方がないのに。
何も身に纏ってない右の太腿を抱え上げられて、付け根に近い部分に唇を寄せたかと思えばキツく吸いつかれる。
あの泉ちゃんが、アタシにキスマークを残すだなんて。ふふ、ふふふ。と笑い声を漏らせば、男の子の顔をした泉ちゃんが見せつけるように内股の柔らかい皮膚に舌を這わせてくる。
ゾクゾクと這い上がってくるような快感に思考を蕩かされ、はしたないとわかっていながら自ら脚を開き、泉ちゃんを欲しがるそこを見せつけるように身体を捩った。
タイムリミットまであと少し。身体に乗りかかる泉ちゃんの重みも、体温も。アタシの中に入ってくる熱い感覚も、「なるくん」とアタシを呼ぶ声も。
ぜんぶぜんぶアタシだけのもの、なんて優越感に浸りながら、泉ちゃんに支配されるこの甘すぎる時間を、お腹いっぱいになるまで味わい尽くしたのだった。
冬の日のせななる。
おわり