無題休日の朝。淡い日の光が揺れるカーテンの隙間から零れ、シーツの上に溶けていた。
いつもの善逸なら、この時間に自然と目を覚めることなんてまず無い。しかし、今日は違った。鼻先を擽る、ほのかに甘い香り。まだ、夢の中にいた頭が一気に現実に引き戻される。手探りで隣に伸ばした指先は、彼のぬくもりを見つけることができなかった。
「もう起きてるんだ」
誰もいない方へひとこと呟き、善逸は布団から上体を起こした。狭い寝室いっぱいに漂う甘い香りは、腹の中の虫さえも起こし、腹の音が鳴った。
甘い蜜に誘われるように引き寄せられるまま、軽やかな足取りで台所へ向かった。
「おはよう獪岳、今日もはやいね」
「おまえは毎度遅すぎるんだよ、カス」
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