堕ちる灯「ねぇ、これ湿気ってるんじゃない?」
思春期たちの胃袋を満たすものを求め、徘徊したコンビニエンスストア。そこの一角、値引きワゴンに置かれた色褪せた花火の袋を手に善逸は笑った。夏の残り香のような商品だ。湿気っていても不思議じゃない。
帰りの際に一緒に買ったライターを使い必死に火を灯そうとするが、花火は音を立てず善逸は歯を食いしばった。その様子を横目に見ていた獪岳は皮肉げに嘲笑った。氷菓をひとくち、喉仏がぴくりと動く。箱庭にこもる夏の熱気が、ふたりを包み込んでいた。
「兄貴、代わりに火付けてよ」
「ぁあ?そんくらい自分でやれ」
愛想も素っ気もない返事に、善逸は袋をガサガサと探りながら小さく溜息をついた。背中からはツンとした淋しさが滲み出ていた。やがて、探しものを見つけた子どものように顔を上げ、
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