君と犬と青空の日スティーブンは食材が入った袋を抱え直して、松葉杖をしっかりと握った。
今日が誕生日だからと、市場の顔馴染みたちがどんどんサービスしてくれたせいで、荷物は随分重たくなってしまった。市場から自宅へ帰るには、坂道と階段を登る必要がある。それが少しばかり厄介だ。
今朝から天気がいいので、クラウスは畑に出ている。いつもはそちらについて行くボーダーコリーのお嬢さんが、尻尾をぶんぶんと振りながらスティーブンの買い物に付き添ってくれている。
「レディ、ゆっくり歩いてくれるかい?」
お嬢さんは心得たと言わんばかりに上向けた鼻をふんふんと鳴らした。クラウスの手でしっかりと躾けられた賢い犬は、人の言葉を理解し、リードを引かずともスティーブンの意を汲んで歩いてくれる。
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