それは墓?彼の…ずいぶん優しいんですね。
優しさじゃないよ、ただの義務感だ。
彼を悼む気持ちではないと?
同情なんかしてやらない。彼にだって信頼を寄せてくれる人がいたんだよ?好きだと言ってくれる人がいたんだよ?なにを捨てても生き残りたいと思うその気持ちのひとかけらでも共に過ごしてきた仲間に向くことはなかったの?なにを信仰していたっていい、親しい仲に情は湧かなかったの?勝機が見えていたのに、敵と手を切れなかったのは?
情は湧いたかもしれない、けど、もう彼は、
手遅れだったとしても、引き返せなかったとしても、手を伸ばせば届いたかもしれない、生きたいと言うなら何度だって寝返ればよかったんだ。
寝返ったら、許したんですか?
許さないよ。彼が貫いた信念がぼくと大切な人を引き裂いて、どれだけの戦力を殺したと思ってるの。
仲間を戦力という君も大概ですけどね。
ぼくにとってはただの戦力でも、彼らにだって生きるための信念はあった。仲間に奪われるための命ではなかったはずだ。
まあ、そうでしょうね。
だから許さない。生きたいと言うなら生き地獄を味合わせてやったのに。
…可哀想に。
そう?当然の報いじゃない?
ええ、だから君が可哀想。
……は?
全てを失ったのは君だけだ。
…っ!!!
かわいそうに。