2025-05-20
「心に決めた人ってだれなの」
ニナの大きな緑の目がまっすぐに俺を見つめてくる。真昼間のレオナの酒場。次の仕事までに開いた時間で昼飯を、いままさに食おうとしていた俺めがけて歩いてきたニナが開口一番言ったのだ。
馴染み客だけに出される昨日の残り物サンドイッチに食いつきながら、俺は内心首をかしげた。この娘がフリックに熱を上げているのは流石に知っている。フリック側が逃げ回っているのも理解しているし、そこに介入するつもりもあんまりない。
勝手にやるだろ。あいつだって大人だし、ガキに手を出すような奴じゃないことなど百も承知。何よりオデッサの事がある。
「誰に聞いても知らないの。リッチモンドさんは教えてくれないし」
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