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    糸宮 キョロ

    ボツにしたものやpixivに投稿するほどでもない短編ものなどを供養する場になると思われる。所謂ごみ捨て場。

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    糸宮 キョロ

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    ワルワリ。正確に言うと私の性癖を詰め込んだワルワリもどきの短編。こういう何が言いたいのか分かんないような仄暗い小説が好き(書けるとは言ってない)

    pixivに投げたワルワリと同じ世界線で書いてるけど本編とは全くの無関係なのでこっちにポイ。本編続きは待ってて(待ってる人いる?忘れられてるんじゃね?)


    あ、そうそう。新郎新婦の立ち位置は新郎が右で新婦が左なんですってね。これ書く時に初めて知った。

    分かたれた蝶はまた出会う。テーブルに置かれた、様々な種類の紫が詰まった小瓶。
    明度や彩度はそれぞれ違い、ラメ入りのものもあれば、パステルカラーのマットなものもある。
    こんなにたくさんの種類があると、マニキュアに興味はなくとも壮観だ。魔女の妙薬を想像させる。
    「気にいったか?」
    突然視界の先に細く節くれだった長い指が現れ、小瓶を一つつまんだ。
    親指と人差し指の間で不安定にゆらゆら揺れる小瓶には、一番スタンダードな、紫といえばこれといった色をした液体が詰まっている。
    いやらしい感じにテカテカ光って、ワルイージの趣味の少し暗めの暖色照明の光をゆるく跳ね返している。
    まぁでも、答えとしては………
    「どうでもいいな。」
    「お前らしいよ。」
    言うと思った、と言いながらことりと小瓶を机に戻す。
    それから乱雑に置かれたそれらを一直線に整列させ始めた。
    一つ一つ、淀むことなくつらつらと説明しながら。
    「これがエナメル。こっちはジェルで、これはパステル。この辺は色味違いだな。アイリス、バイオレット、ベルフラワー、モーブ、ラベンダー。このちょっと透明でキラキラしてるのはアメジスト。化粧品会社もいいネーミングセンスしてるよな。これは赤に近過ぎる気もするけど一応紫の仲間でフューシャって言うんだ。………あぁ、これも黒っぽいけど紫の仲間。プラムとマルベリーで、どっちも果実の名前だ。」
    そう言って深い紫の入った丸っこい小瓶を列の最後に並べた後、こっちを見やった。
    「どれがいい?」
    できることならどうでもいいと言いたかったが、多分どれでもいいから一つ選べとうるさく言われそうな気がしたからずらりと並ぶそれの中の一つを指差す。
    「これ?」
    「それ。」
    選んだのはワルイージが最初に手に取った、エナメルのパープル。直方体を捻ったようなスタイリッシュな形の小瓶に入っている。
    「何でこれ?」
    「お前っぽいって思ったから。」
    「ふぅん。」
    聞いてきたくせに興味なさげに返してくる。
    きっと大した意味はない質問だったのだろう。
    そう思い、ワルイージに背を向けると呼び止められた。
    「何だよ。」
    「ちょっとソファに座って待ってろ。」
    「はぁ?」
    「いいから。」
    有無を言わせない物言いでそう言うと、そそくさと洗面所へ言ってしまった。
    無言の抵抗として勝手に寝室に行って寝てやろうかとも思ったが、別に眠いわけじゃないし付き合ってやることにした。
    言われた通りソファに座って待っていると、さっき選んだもの含むマニキュア数種類とピンセットなんかの細々した道具を持ってやってきた。
    そしてソファに座る自分の足元に跪いて右足を取った。
    「何の真似だ。」
    「これ、塗ってやろうと思って。」
    そう言うとウエットティッシュで爪を拭き出した。
    一通り拭き終えると、さっき選んだマニキュアの蓋を開けて親指の爪に塗ろうとブラシを近づけてきた。
    「やめろ。」
    慌てて足を引っ込めると、不満げな顔をされてまた足を取られた。
    「じっとしてないとはみ出る。」
    「いや、その前に俺は塗っていいなんて言ってない。」
    「そうだったか?でも足だから靴履いたら見えねぇよ。」
    「う、わっ………」
    粘度の高い紫の液体が爪にぺちゃりと触れる。
    それはブラシによって丁寧に引き伸ばされていき、肌の色の透けた乳白色は毒々しい紫に覆い隠された。
    「ん。はみ出てない。」
    満足気に呟くと、乾かすためだとふっと息を吹き掛けられた。
    擽ったくて思わず足がびくりと震えた。
    「何、気持ちいい?」
    「ふざけんな、擽ったかっただけだ。」
    「嘘つけ。」
    「いい加減にしねぇと蹴るぞ、馬鹿。」
    「おぉ、怖い怖い。」
    そう戯けてから親指の腹に口づけてきた。本当に蹴ってやろうかと一瞬思った。
    でも自分の力の強さとワルイージの非力さを考えると骨折は免れないだろう。
    衝動を押し留め、ワルイージに身を任せる。
    今度はラメ入りのマニキュアが人差し指に垂らされた。
    ぬるぬると引き伸ばされて、どんどん元の色が隠れていく。その様子を眺めているのは大袈裟かもしれないが、自分が人ならざるものに変えられていくように感じてあまり心地よいものではない。
    見ないでおこうと目を閉じると、足元でワルイージがごそごそしている様子が鮮明に感じられた。
    時折冷たいものが爪を掠め、ピンセットがカチカチと音を立てる。
    不規則に続くその静かな感覚はうとうとと意識を微睡ませる。
    ベッドに行きたいと言いかけたが、ネイルアートに夢中のワルイージに声をかけるのは憚られた。
    まぁ、ソファで寝ようがベッドで寝ようが大した違いはないか。
    そう思い、今度は眠るために目を閉じた。






    「……ん、ぁ………?」
    気がつくとワルイージは居なくなっていた。
    膝にはタオルケットが掛けられている。つくづくマメなやつだ。
    そう言えば、ネイルアートの途中だった。
    思い出して投げ出した足の先まで覆うそれをどけ、爪を確認する。
    「おぉ………」
    凄い。その一言に尽きる。
    どこで覚えたのか、クオリティがプロ並みだ。
    右足親指は紫の上に赤いバラの絵が描かれている。左足薬指は面積が狭いにも関わらず、綺麗なグラデーションが。他の爪もラインストーンが飾られていたり、金箔入だったりと華やかだ。
    マニキュア自体も質がいいのか、最初の下品な照りは影を潜め、どこか淫靡で哀しげな微光だけを返している。やっぱりワルイージに似ていると思った。
    それにしても凄い出来だ。
    ネイルなんてものには全く興味ないが、ここまで作り上げられると夢中で見てしまう。
    しばらく眺めていたが、一箇所だけ気になる所があった。
    右足小指の爪に描かれた柄がよく分からない。
    子供が描く簡単な蝶を逆さにして半分に割ったようなものが赤い線で爪の右端に寄せるようにして描かれている。
    なにかこれに似たものを見たことある気がするが、思い出せない。
    目を閉じて思い出そうとしてみる。
    赤。線。蝶。
    う〜ん………
    「………はっ!」
    駄目だ、寝てしまった。
    がしがしと頭を掻いて眠気を振り払い、立ち上がる。
    その弾みで床に落ちたタオルケットはソファの上に避難させ、寝室へ向かった。
    「お。」
    やっぱりワルイージは先に寝ていた。
    緩く組んだ手を腹の上に置く死人みたいな寝相で、大人しくベッドの端に寝っ転がっている。
    ワルイージと同居し始めた頃はもう一つベッドを買おうかと思っていたが、同じベッドでいいというからなんだかんだでずっと一緒に寝ている。ワルイージの寝相は誰かに整えられたみたいに綺麗だし、超のつく痩せ型だから案外一人で寝るのと変わりない。
    ………まぁ、一緒に寝ているおかげで色々迷惑被ったこともあるにはあるが、家具は少ないに越したことはない。
    ベッドの空いたスペースに潜り込み、ワルイージの被るタオルケットを引っ張って自分の分を取る。
    その時、ワルイージの足先に何か光るものが見えた。
    なんだろうかと覗きこむと、眩しいぐらい黄色ばかりのネイルアートが十個お行儀よく並んでいた。
    一つ一つのクオリティは凄いが、ワルイージのどことなく病弱そうな足の上では浮いて見える。ここまで黄色が似合わないやつも珍しい。
    右足小指のものから順に見ていくと、最後の左足小指のネイルアートに目が止まった。
    ちょうど自分の右足小指のデザインを反対にした柄だ。
    もしかして、とワルイージの足の隣に自分の足をくっつけてみる。
    赤の線が繋がり、赤い線が蝶々結びの形を描いた。小指に、だ。
    「………運命の赤い糸。」
    やっと思い出したその一言を呟く。
    思ったより小っ恥ずかしいその単語にじわりと胸を焦がすような怒りと羞恥がこみ上げてきた。
    なんでもないような顔をしてこんなチンケな絆をあしらったのにも腹が立つし、恥じることなくその片割れを自分と結びつけたワルイージにも腹が立つ。
    でもその元凶は死人のような寝姿で夢の中だし、ネイルアートを勝手に落とそうにもクオリティだけは高いから名画を破くような罪悪感があってどうしようもない。
    行き場を無くした怒りのまま、ベッドに勢いよく倒れ込んだ。
    歪んだスプリングがまた戻る時の揺れにワルイージが眉を顰めたが、目は覚まさなかった。
    自分が言うのもなんだが、全く呑気な奴だ。
    「こんな気持ちにさせやがって………」
    そう言って伸ばした足先がワルイージの足先にくっついて、また赤い糸が繋がったことに俺は気づく由もなかった…とだけは言っておこうか。
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    Replies from the creator

    糸宮 キョロ

    DONE一応pixivに上げてる「%」の世界線ではある。故に全てが狂ってる。名前がワリオとワルイージなだけ。ぬるい性描写とがっつり飲酒描写(飲んでるのはワルイージだけ)あとは安定のキャラ崩壊・口調崩壊・世界観崩壊。海よりも深い懐をお持ちの方のみ読んでください。これを読んで気分を害しても私は一切の責任を負いかねるので。
    「テキーラなんてさ、度数が高いばっかだと思ってたけど………こういうのはいいよな。」
    ベッドの縁に腰掛け、屈託のない笑顔でショットグラスを傾けるワルイージ。40mlの琥珀色が重力のままに薄い唇の間に流れ込んでいくその様をベッドに横たわって眺める奇妙な時間が静かに流れる。暇だ。
    「ん、甘い。」
    沈黙と退屈に耐えかね大あくびをする自分を他所にそんな感想を呟いているが、正直自分には分からない。果物のような香りがするとか蜂蜜に似た甘みがあるとか言われて飲んでみたものの度数の強い酒特有のアルコール臭さと喉が焼けるような感覚にギブしたことが何度もある。味なんて、剰えその中に隠れた甘みなんて感じることすら叶わない。そもそも甘みなど存在するのだろうか、ワルイージがデタラメを言っているのではと思えてくる。
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