さ・ろ「「はいどーもーどついたれ本舗いいますー」」
さ「いやあ暖かくなってきましたね」
ろ「春ですね」
さ「春といえば、アオハル!青春の季節ですね」
ろ「そうですね」
さ「ボク告白されてみたいな〜ってずっと思ってまして」
ろ「はあ」
さ「ドキドキするやつな」
ろ「簓…」
さ「えっ何」
ろ「ずっと言ってなかったんやけど…俺…」
さ「え、え?」
ろ「高校生の時ヤンキーやってん」
さ「…うん、知ってたよ?」
ろ「え、なんで?初めて言うたよ」
さ「多分お客さんもみーんな知っとったよ、見たら分かるからな?隠してたつもりやったん?」
ろ「おん」
さ「言うときますね、俺らが『はいどーもー』って出てきた時、お客さんみ〜んな『あ、糸目とヤンキーのコンビやな』って思ってました」
ろ「(客に向かって)なんやとコラ」
さ「出てる!!元ヤンが出てるて!!」
ろ「なんでなんや」
さ「顔に書いてあるもん。お前の高校時代ってあれやろ、1に」
ろ「喧嘩」
さ「2に」
ろ「喧嘩」
さ「朝から晩まで」
ろ「喧嘩三昧」
さ「殴った顔面」
ろ「星の数」
さ「こわっ。え?学生時代のあだ名、何?」
ろ「正拳突きのツツジ」
さ「正拳突きのツツジ?言いづらい!」
ろ「呼びにくいからみんなキツツキって略してたんやけどね」
さ「キツツキて!急に弱いやん、コツンコツンやん」
ろ「浪速のキツツキって俺のことやねん」
さ「ダサすぎますね、いやそれより告白ってそういう告白ちゃいますって。学生時代の甘酸っぱい思い出!呼び出されて行ってみたら『好きです』って言われるやつ!」
ろ「なるほどな」
さ「ほなお前、放課後に俺のこと呼び出して告白してくる生徒役、やってや」
ろ「おう、分かった」
さ「キーンコーンカーンコーン、は〜あ、やっと授業終わった〜」
ろ「簓、呼び出しー!体育館裏に来てくれって!」
さ「ええ?なんやねん…(やれやれと歩いて行く)」
ろ(立ってる)
さ「どうしたん?こんなところ呼び出して…」
ろ「…」
さ「なあ」
ろ「スキです!!!(正拳突き)」
さ「どっっ(倒れる)」「(小声で)違う違う違う…」
ろ「どうした」
さ「(起き上がる、腹抑えつつ)ちゃうやん、『隙です』て『隙あり!』みたいな意味で言うとったやん」
ろ「危ないで、体育館裏呼び出された時にあんな無防備に立ってたら」
さ「おいキツツキ」
ろ「んっ?」
さ「出てんねやキツツキが!」
ろ「そう呼ばれると血が騒ぐな」
さ「しずまりたまえ。漫才中の相方に正拳突き禁止!当たり前やぞこんなん」
ろ「分かった」
さ「もう一回やり直しな、キーンコーンカーンコーン、はーやっと放課後や」
ろ「簓、呼び出しー!職員室来てくれって!」
さ「今度は職員室?はあ、なんやろ…」
ろ(立ってる)
さ「どうしたん?こんなところ呼び出して…」
ろ「教師になんやタメ口とは」
さ「ですよね?先生やんな?ちゃうやん」
ろ「白膠木、最近あの不良の躑躅森とつるんでるらしいな…」
さ「うわその話?」
ろ「この前も体育館裏で喧嘩しとったらしいやないか!」
さ「違います、先生、ボク被害者なんですて」
ろ「喧嘩してるとこ見たっていう生徒がいるんやぞ」
さ「めんどいなあほんま。誰?誰が見たって言うてるんですか」
ろ「タロウとハナコや!体育館裏でハナコがタロウに告白しとったら、後からお前らが来たって」
さ「おい!漫才外で青春を展開せんでくれ!」
ろ「タロウとハナコ付き合ったらしいで」
さ「うらやましい話です。いや俺もタロウとハナコの方に行きたい。青春漫画の世界の方に。今の俺、完全にヤンキー漫画の主人公になってもうてる」
ろ「ボクの愛読書ですね」
さ「知っとる知っとる。一回ヤンキー漫画閉じてくれ、後で読んでええから。な?やり直しな、呼び出す場所、体育館裏も職員室も禁止」
ろ「(不満げに)分かった」
さ「キンコンカンコン(テキトーに)あー放課後」
ろ「簓ー!呼び出し!屋上に来てくれって!」
さ「お!屋上かあ、ええやん。青空の下で‥‥ってね〜。(ドア開ける)ガチャ!」
ろ「(仁王立ち)♪チャララーーン、チャチャチャチャチャチャーチャーン」
さ「決闘のBGMを流すな!」
ろ「ヒュオオオ…」
さ「風を吹き荒らすな!!」
ろ「よお簓ぁ…お前センコーにこの前のんチクったらしいなぁ」
さ「またキツツキ来てるやん!誰や呼んだの!!」
ろ「お前、そのあだ名知った上で俺に喧嘩売るとは…ええ度胸や」
さ「最悪や、変なやつに目ぇつけられてもーた」
ろ「気に入った!俺と、この町の不良の天下獲ろうや!」
さ「お断りします!」
ろ「はあ?なんでや」
さ「いやなんで俺ヤンキーにお断りせなあかんねん、惚れた腫れたの話がやりたいっていうとるやん」
ろ「殴ったろか?」
さ「惚れた腫れたの『腫れた』だけ拾うのやめてくれへん?物理で顔腫らそうとしとるやん」
ろ「シュッ(殴る)」
さ「あぶなっ!(避ける)も〜分かった。俺が告白する側をやるわもう。設定も俺が決めます」
ろ「おう(不満げ)」
さ「俺にはずっと片想いしてる子がおんねんけど、とうとう思いを告げられないまま、急にその子が引っ越すことになってん。引越しの日、俺がその子に想いを伝えるために、急いで走って駅に向かうシーンからな」
ろ「おう…」
さ「あと10分であの子が乗った新幹線が発車してまう…間に合わない…!」
ろ「ドゥルンドゥルン(バイク)」
さ「は!?」
ろ「(ヘルメットを投げる)乗れ!…行くんやろ!?」
さ「き、キツツキ…!」
ろ「(2ケツしながら)つかまってろよ、飛ばすで!」
さ「おう!」
ろ「ブオーン」
さ「これこれ、青春やん!クラスのヤンキーが助けてくれんねや、実は良いやつやんなあ」
ろ「キキーッ!」
さ「ありがとう!ほな行ってくるな!(駆け出す)」
ろ「簓ー!」
さ「何ー!?」
ろ「そっち川やでー!!」
さ「おい、河川敷連れてきとるな?」
ろ「隣町のヤンキーとの決闘…頑張れよ」
さ「おい」
ろ「やっぱり俺も一緒に行ったるわ」
さ「いらんいらん」
ろ「お前1人じゃ心配やから」
さ「ええやつ!!でもいらん!!」
ろ「浪速のキツツキの拳を…」
さ「正拳突き禁止て言うたやん!キツツキも禁止や!」
ろ「(不機嫌)なんでやねん」
さ「俺は甘酸っぱい青春がしたいの!血生臭いヤンキー漫画は禁止です!」
ろ「ああ!?さっきから禁止禁止って…ルールばっかりやん!グレてやるわ!」
さ「いやもうグレとんねんお前。いいかげんにしろ」
さ・ろ「「どーもありがとうございました」」