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    hanakanzashi410

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    hanakanzashi410

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    来ちゃったしたけどキス目撃したやつの続き

    赤安♀だよ 2日はゆっくりしなさい、これが診断結果だった。じゃあホテルでゴロゴロ、というのは僕の性格上無理で。少しだけ散歩をすることにした。
     昨日と同じコース、同じ場所。あそこで熱烈なキスするくらいだもん、本命だよなぁと、昨日とは打って変わって冷静になりながら建物を見上げた。
     スマホの電源は切ってある。居場所が気づかれないように。でも、そろそろ彼は僕を見つけるだろう、という予感はしている。
     
    「零!」
     
     ほら、ね?息を切らせた彼が、建物の中からでてきて、道路を挟んで僕と対面をした。遠目だからわからないけど、どことなく顔色が悪いのは、今朝のことを僕に知られてしまったから、だと思う。
     もういいよ、それだけを思いに乗せて頭を下げた僕は、昨日と同じようにその場から離れた。追いつかれることは想定済みだ。
     赤井は行き交う車を無視して道路を渡ってきた。響くクラクションに怒声、それを無視して僕へ最短ルートで向かってくる彼。やはり、顔色はあまり良くない。
     
    「零!話を聞いてくれ!」
    「別れ話でしょ?いいですよ、別れましょう?」
    「違う!」

     渡りきり、僕の行く手を塞いだ彼は、僕の肩を掴んで声を荒らげた。それに冷静に返せてるのは、別れたあとのことを考えているからだ。
     
    「なら、なんの話しをするんですか?彼女に」
    「そこから違うんだ、あいつはただの同僚で、昨日はほかの奴らも部屋に」
    「知りませんよそんなこと」
    「なら」
    「僕はあなたがキスをしていたのを見た」
    「あれはあいつがうるさくて」
    「黙らせるためのキスはしないって言ってたのに?……無意識下であの人のことを好きになったから、だから、黙らせるキスを勢いでしたんじゃないですか?僕のときのように」
     
     しないって言ったのに。僕だけって言ったのに。こちらとあちらでは文化は違うしキスなんて大したことじゃないかもしれなくても、それでも僕は受け入れられない。なにより、赤井がテリトリーに彼女を迎えていたことに、だ。他にも人がいた?見ていないものの言い訳なんていくらでも出来るじゃないか。
     そう言ってしまいそうになるのを、お腹をさすることで抑えた。それを凝視している赤井に、言うならここだ。
     
    「認知だけはしてください。あなたの家族に言い訳できるように。他は要りません」
    「まさか……」
    「ええ、直接伝えた方がいいと思って」
    「っなんて無茶を」
    「なんにせよ来て良かったです。知らないままだったら、あなたを縛って」
    「そんな身体で来るやつがあるか!!」
    「こっちで産むつもりだったんですよ。だから有給と、産休と、育休と、全部駆使して2年はこっちにいられるように」
     
     でも帰ります。
     日本で、あなたのいない所で、このこと2人で生きていく。赤井は自分の幸せを選べばいい。
     肩を掴む手に触れて離すように促す。だけどそれはく、抱きしめるに変わってしまっていた。久しぶりの赤井のぬくもりにじわり、泣きそうになりながら、離してと。僕の言葉を聞いても赤井は無言で、さらに強く抱きしめられてしまう。

    「赤井、離して」
    「離したらきみは帰ってしまうだろ……」
    「そりゃ帰りますよ」
    「いやだ……」
    「僕だって嫌ですよ」

     こうして引き止められてるの。
     愛されてるって錯覚してしまうから。
     
    「こっちで、産んでくれ……」
    「知らない土地でひとりで何が出来るって言うんですか」
    「俺がいる」
    「……別れるのに?」
     
     そう言うと赤井の腕にさらに力がが込められた。慣れ親しんだタバコの匂いと、彼が使わないような甘い匂いがほんのりと香る。これはあの人の匂いなのかな……こんな香りがうつるほど近くに彼女はいたのだ。
     気持ち悪い……
     
    「離してください」
    「いやだ」
    「ほかの女の匂いをつけて抱きしめな――っ!」
    「零!?」
     
     叫んだ途端痛み出したお腹。そうだ、僕は安静にしてなきゃいけなかったのに、散歩なんて出たから……
     
    「いた、い……」
     
     だからバチが当たった?ちがう、疲れが溜まりすぎただけ。大好きな人を遠ざけようとしたから……だけど、僕たちが縛っていい人じゃないだろ?
     そうして僕の意識は途切れた。
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