【オフェ納】そこ隠すんだ シャツの前をすっかりはだけた後で、メガネをかけたままなのに気がついた。脱衣所でしばらく逡巡したものの、疲労にかまけてルーティンから外れることにした。洗濯機の上にメガネを置いておく。今日は一番風呂だった。普段は熱めの湯を好まないので後に入るのに。熱そう。熱い。熱すぎ。体を湿らすのも程々にシャンプーのポンプを押す。チュコ。チュ。
「……」
またもルーティンを外れる。ボディーソープを手にとって泡立てた。なんだか、いつもと少し違った香りに感じる。先にシャンプーをしなかったからだろうか。
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「シャンプーの詰め替え渡しそびれたな……」
所定の場所にメガネを置き忘れてたから、てっきり戻ってくると思っていた。相当疲れているのだろう。詰め替えを持って風呂場に行く。
「イソップ」
「……すみません」
俺が気づいてなかったらどうするつもりだったのだろう。デカい声出して俺を呼ぶなんてしないだろうし。そう考えるだけで実際に聞くことはせず、風呂場のドアを半開きにしてシャンプーを差し出した。
「届かない。普通に入ってきても……」
「わ、わかった」
ばちん、と風呂場のドアを閉める。ふと洗濯機の上を見ると、メガネが湯気ですっかり曇っていた。