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    響月柚子

    テイルズ好き、雑食。地雷ほぼなし。エロ・変態・腐発言注意です!エロ伝道師見習い。18禁垢(@kyoudukifu18)あり。 只今の沼→アイベル/カプは固定されてません!

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    響月柚子

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    書きかけ晒し祭①
    肌色成分は多いが全年齢!

    恋が始まるかもしれないやつ(全年齢) とある朝。いつものようにダインスレイヴが目を覚ますと、そこには信じられない光景が広がっていた。
    「…………は?」
     ──夢であったら、どんなに良かっただろう。
     ガンガンと痛む頭は、昨晩の酒が残ったのかそれとも精神的なものか。
    「……勘弁してくれ」
     小さく呟いた言葉は、朝の爽やかな空気にかき消されて消えた。


    (──落ち着け。まずは冷静に状況を整理しろ)
     ダインスレイヴは自分に言い聞かせるようにそうひとりごちて、ゆっくりと一度深呼吸する。
     昨晩の記憶は酷くおぼろげだ。
     いつものように酒場で酒を嗜み、部屋に戻ってきた。それは確かだ。だが──その前後の記憶がない。
    (……まさか)
     だらだらと、嫌な汗が頬を伝う。
     ダインスレイヴはぱちぱちと何度も瞬きを繰り返して、改めて室内を見回した。
     するとどうだろう。
     間借りしているすっかり見慣れた部屋の中、異質なものがいくつかあった。
     一。散乱した衣服。
     二。半裸の自分。
     三。全裸の少女。
     ──認めたくはないが、状況証拠は全て揃っていた。
     密着した身体、互いの息遣いさえ感じ取れる位置に、少女──蛍はいた。
    「……冗談だろう?」
     いくら酒で酩酊状態だったとしても、同意もなく女を連れ込む趣味はない。……ないはずなのだが、ダインスレイヴの考えとは相反して、現実は酷く残酷だ。
     祖国が滅亡し、この身に呪いを受けて五百年余。色恋沙汰とはすっかり無縁だと思っていたが、まさか今更こんなことになるとは。
     ダインスレイヴはおそるおそる隣で眠る蛍の様子を盗み見る。すぅすぅと可愛らしい寝息を立てる少女は、白い肌を惜しげもなく晒している。布団の隙間から垣間見える素肌は透き通るように美しく、つい目が離せなくなってしまう。
     ダインスレイヴはごくり、と、半ば無意識に生唾を飲み込む。
     ──やましい気持ちが全くなかったと言えば、嘘になる。
    「……」
     どうせこんなことになるのなら、しっかりきっちり覚えていたかった──そんな考えが頭を過ぎるが、ダインスレイヴはハッと我に返り慌てて頭を左右に振った。
     ──違う、そうじゃない。
     現実逃避にも似た何かがダインスレイヴを襲うが、誰がどう見てもそんなことをしている場合ではなかった。
    (……どうする?)
     少女は未だ可愛らしい寝息を立ててはいるが、もう朝日は昇りつつある。ダインスレイヴに残された時間は残りわずかだ。
     ──言い訳をするか、正直に謝罪するか。
     ああ見えて気の強い蛍のことだ。きっと一筋縄ではいかないだろう。
    「──うぅん……」
     答えを決めかねているうちに、少女は小さく唸りながら寝返りを打つ。固く閉じられた瞳が小さく揺らいで、焦点の合わない瞳がじっとこちらを見た。
    「…………ぁえ?」
     しっかりと視線が重なった、およそ数十秒後。
    「──きゃあああああっ?!」
     甲高い少女の悲鳴が、ダインスレイヴの鼓膜を破らんばかりの大音量で響き渡った。
    「な、なな、なん、なんでダインが、?! わた、わたし、な、なんでは、はだか、っ、?!」
     慌てた様子でシーツと布団をかき集めた蛍は、大きな瞳をこれでもか、とめいっぱい見開きながらそう叫ぶ。
     そんなこと、俺の方が知りたい──なんて、口が裂けても言えるはずもなく。小さく嘆息して、ダインスレイヴは渋々重い口を開く。
    「……すまない。こうなったのは、全て俺の責任だ」
     全てを受け入れ、謝罪する──それが、ダインスレイヴの選んだ道だった。
    「…………」
     無言の視線が痛い。重苦しい空気は朝の爽やかなそれとは正反対で。耐え切れずにふいと視線を逸らすと、少女が小さく息を吐く音が聞こえた。
    「……それは、何に対する謝罪?」
     静かな声には何の抑揚もなく、背筋がヒヤリと凍り付くかのような冷たい響きを含んでいる。
     小さな身体に不釣り合いな殺気を感じ取って、ダインスレイヴは思わず一歩後ずさる。
     正直なところ、命の危機を感じるような場面は記憶が薄れたものも含めて永い時間の中にいくつもあった。
    (……だが、こんな修羅場の経験はない)
     良くも悪くも、ダインスレイヴは独りだった。人との関わりを極力断ち、ただただ「アビス」を倒すためだけに行動する──そんな日々、だったはずなのに。
     何も言えずに立ちすくむダインスレイヴを、蛍は責めるわけでも非難するわけでもなくただじっと見つめている。
    「同意を得ずにしたこと? 気持ちがないのにしたこと? それとも──初めてを奪ったこと?」
     少女の口から淡々と語られる推測は、どれもある意味的を得ていた。ある一点を除いては。
    「……はじめて?」
     聞き捨てならない蛍の言葉に、ダインスレイヴはばっと勢いよく顔を上げる。重なる視線の先──少女の表情は真剣そのもので、決して嘘を言っているようには見えない。
     ぶわ、と、全身の穴という穴から嫌な汗が吹き出した。
    (処女……だったのか? 旅人が? ありえん……)
     可愛らしい外見に、行く街々で問題を解決する地頭を持ち、冗談を言うユーモアも合わせ持っている──ダインスレイヴの気持ちを抜きにしても、蛍は魅力的だ。
    「…………本当にすまない。この通りだ」
     床に膝をつき、頭を下げる。こんなことで許してもらえるとは思えないが、やらずにはいられない。
    「……」
     蛍はそんなダインスレイヴを無言で見下ろしている。その表情からは相変わらず何の感情も読み取れない。
     一体どうすれば──途方に暮れながら頭を下げ続けていると、少女ははぁあ、と盛大にため息を吐く。そして。
    「ね、ダイン。責任、取ってくれる?」
     しゃがみ込みダインスレイヴの顔を覗き込んだ蛍は、にっこりとそれはそれは綺麗な笑顔で言った。
    「……責任……?」
     はてさて、「責任を取る」とは一体何をせねばならないのだろうか──ダインスレイヴはまるで子供のように少女の言葉を復唱する。
    「そ。私の"初めて"を奪ったんだから、もちろんその"埋め合わせ"、してくれるんだよね?」
    「……埋め合わせ」
     笑顔の圧が強い。
     一般的な女性の言う「責任を取る」や「埋め合わせ」とは、いったいどのような行為に当たるのか。そもそも蛍をその他大勢の「一般的な女性」に当てはめていいものなのか。
     ダインスレイヴはどう反応していいか分からず、眉間にシワを寄せた。
     その瞬間。ふと遠い昔の記憶が蘇る。
    『ダインスレイヴ様はお顔立ちが整っていらっしゃるから、女性には十分気をつけて下さいね』
     顔もはっきり覚えていない誰かが、苦笑しながらダインスレイヴに語りかけてくる、そんな懐かしい記憶。
    (……部下の忠告は、もっと真面目に受け止めておくべきだったか……)
     今さらながら後悔したが、もう遅い。
    「とりあえず準備して。出かけるよ」
     どこに、なんて、聞けるわけもなく。
     有無を言わせぬ様子の蛍に、ダインスレイヴはただ小さく頷くことしかできなかった。


     半ば強引に朝の支度を終えたダインスレイヴは、蛍に連れられるがまま街中にいた。
    「──おい、どこへ行くんだ」
     ぐんぐんとダインスレイヴの手を引き進み続ける少女は、ピタリと歩を止めるとキッとこちらを睨み付けて言った。
    「デートだけど?」
    「…………デート?」
     予想外の言葉に、ダインスレイヴはぱちくりと大きく目を瞬かせる。
    (デート? 誰と、誰が?)
     脳内が疑問符で一杯になるダインスレイヴを、蛍は呆れたような表情で見上げてくる。
    「……なに、その目。私が相手じゃ、不満?」
    「……いや……」
     不満なんて、あるはずもない。
     そう素直に吐露できたなら、どんなに楽か。
     ダインスレイヴは曖昧に言葉を濁しつつ、蛍からそっと視線を逸らす。すると何を思ったのか、するりと少女の手のひらがダインスレイヴのそれをギュッと握った。
     しかもただの握ったわけではない。相手の指が自分の指の間に入る握り方──所謂恋人繋ぎというものである。
     グサグサと突き刺さるような人々の視線が痛い。当然と言えば当然なのだが、蛍はどの街でもちょっとした有名人だ。ただでさえ目立つ彼女が街中で男と手を繋いでいたとあっては、嫌でも注目の的だろう。
    「……おい、何をしている」
     精一杯冷静を装って、握られた手を外そうと試みる。けれどダインスレイヴの想像以上に強く握られたそれは、少々のことではびくともしない。
    「デートなんだから、このくらい当然でしょ。なんなら腕、組んでみる?」
     元はと言えば自分が悪いとはいえ、ダインスレイヴは色恋沙汰とは無縁の生活を送っている。そんな男がいきなり異性と仲睦まじく、など、できるはずもない。
    「……遠慮する」
     悪戯な目をした蛍の問いに、ダインスレイヴは力なくそう答えた。
     ここ数時間で、どっと疲れた自覚がある。
     ある意味で、五百年余り続く呪いよりも質が悪いかもしれない──そんな失礼なことを考えながら、ダインスレイヴは眉尻を下げて蛍を見下ろす。
    「ふん、ふん、ふーん♪」
     けれど意外なことに、少女の機嫌は良さそうだった。
    「……」
     鼻歌混じりにスキップでもしそうな雰囲気の蛍に、罪悪感が少しだけ軽くなる。そんなもの、気持ちの問題ではあったが。
    「あら旅人さん、イケメン連れて。今日はデート?」
    「いつもの小さい子はいないの?」
     顔見知りなのか、度々そんな声がかかる。その度に蛍は律儀に立ち止まり、暫し会話を楽しむ。目の前で惚気られているかのような会話を繰り広げられて、さすがのダインスレイヴも羞恥が勝ってくる。
    (旅人は恥ずかしくないのだろうか?)
     握られた手のひらが熱い。
     ダインスレイヴは少し前を歩く蛍を盗み見る。するとどうだろう。その耳はわかりやすいほど真っ赤に染まっていた。
    「…………旅人」
     繋いだ手のひらに力を込める。
     びくりと身体を跳ねさせた少女は、歩みを止めておそるおそるダインスレイヴを見上げた。
    「な、なに……?」
    「──場所を変えるぞ」
    「え」
     少女の返事も待たずに、ダインスレイヴはそのまま手を引いて街の外へと向かった。

    「……ここまで来ればいいか」
     風神の街を出てしばらく。巨木を前に、ダインスレイヴは小さく息を吐く。
     街からほどよく離れたその地は、人の姿はなく穏やかな時を刻んでいる。
    (七天神像があるのはいけすかんが、背に腹は変えられん)
     さわさわと葉の擦れる音が心地よい。
    「ダイン……?」
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