人間の過ちが引き起こした未曾有の大災厄から十数年。かつて共存していた人と妖怪の関係は次第に遠ざかり、都市の街区に棲むのはその殆どが妖怪だ。僕らが生活する六分街も、住民たちは皆妖怪である。僕たち兄妹を除いては。
あの厄災によって住む場所を失い、手負いの僕たちを拾ってくれたのが、六分街の住民たちだった。彼らは僕ら兄妹があやかしではないと知りながら、傷の手当てをし、住む場所と食べ物を与えてくれた。以前、隣人のチョップ大将に『どうして人間の僕たちにここまでしてくれるのか?』と尋ねたことがある。彼は豪快な笑顔で答えた。『困ってる奴がいたら手を差しのべるなんてのは、同然のことだろ?』と。そんな彼らに報いるため、僕ら兄妹は所謂何でも屋の形で六分街での困り事の解決や手伝いをしながら生計を立てている。
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