散兵様の恋情「いい買い物ができたよ、ありがとう!」
稲妻のとある土産屋。この国らしい優雅な装飾が施された筒……万華鏡を持って、私は隣に立つ少年に笑いかけた。
「礼には及ばぬ。他に見てみたい物はあるでござるか?」
彼の名は楓原万葉。稲妻での旅に深く関わりがあった人物。
雷電将軍との大激戦の末、どうにかこうにか平和を取り戻した稲妻。元・指名手配犯の彼が当たり前のように歩けているのがその証拠だ。晴れて自由の身となった万葉に、品揃えの良い土産屋を教えてくれないかと頼み今に至る。
「ううん。これすごく気に入ったから。えへへ、同じの三つも買っちゃった」
「誰かに贈るのか?」
満面の笑みで頷いてみせた。一本は自分用、二本はクレーと七七にあげるのだ。喜ぶ二人の顔を思い浮かべていると、横を通りすがった男の子に意識をとられた。
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