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    mukachiman

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    mukachiman

    TIREDフロム・エクスキューズ「氷室さん。海、海行きましょう」
    「急だな」
     唐突に言い出した金田にイエスともノーともつかなき応えを返したのが確か三日前だった。
     見上げた先にはどんよりとした灰色の空がだらしなく広がっている。
     遮蔽物が無いことがイコール良い景色だとは限らない。寂れた片田舎にあって複数路線が入ってはいるもののターミナルには至らない規模の駅からロータリーに降りて、二人はぼんやりと正面を眺めていた。
     ビジネスホテル、複合商業施設、オフィスビルーー都心で見るものより縦に短く横に長いそれらが広々と道幅の取られた交差点にでんと据えられているだけで、その先には何も無い。関東平野には山も無いから、ただひたすら道と低い建物が続いていくだけだ。氷室とてアウトドアは嫌いではないから田舎の方に出かけることも間々ある訳だが、こうも 場所にわざわざ出向いたのは初めてかもしれない。
     曇りとなれば風も一層冷たく感じられ、氷室はロングコートの前を合わせた。タートルネックのセーターを着てきたのは正解だった。昼を回るかというところだが、気温は朝から一向に上がる気配がない。
    「マジで急だったな……」
    「善は急げと言いますし」
    「何 4713