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    kanamochiko

    @kanamochiko
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    書きかけはここに投げれば良いと聞いた。もしかしたらちゃんと書くかもしれない。メッセージやスタンプ貰えるととても喜ぶ(あと自分向けのメモ帳と吐き出しです)

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    kanamochiko

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    特にリュジンとかではない短文を少し、何か書いていないといざと言う時書けませんからね……(少しずつ更新)

    少年は空を眺めた。雲ひとつない、青く果てしない空である。空気はひんやりとしていて肌寒い。少年の木綿でできた衣では心許ない寒さであった。少年は一度身震いしてから再び空を見上げる。小さく息を吐き、吸い込むとぼんやりしていた頭が少しだけ明瞭になった気がした。
    まだ夏は遠い。恋しい相手に会えるのはまだ先のことになろう。それまで自分はここで生き続け時が過ぎるのをじっと待つのだ。少年は背負っていた竹籠をぐっと背負い直し、足元の草を何度か踏みしめた。遠くで犬の鳴く声が聞こえ、それが自分を探している声だということに気づく。もうそんな時間だっただろうか?あたりはまだ明るく、それほど時間が経ったようには感じられなかったがどうやら気のせいだったらしい。夏はまだ遠いとは言ってもそろそろ日が長く感じられる季節なのだろう。徐々に近づいてくる四足歩行の足音に、くるりとその場で振り返り視線を受けると、それは少年の想像通り自らの飼い犬であった。
    少年の足元で立ち止まり、おん、と一声吠えたその犬は少年へそろそろ帰ってこいと伝えにきたようだった。その証拠に、すでに少年の足元から数歩離れたところまでぱたぱたと歩き出し少年の方を振り返っている。
    「今日の夕飯はなんだろうな」少年が小さくつぶやくと犬はつぶらな瞳を瞬かせてそれからもう一度吠えて見せた。どうやらそんなことはどうでも良いらしい。少年は肩を竦ませもう一度カゴを担ぎ直した。そしてもう一度空を見上げてから息をついた。
    まだ夏は遠い、今頃愛しい君は何をしているだろうか。きっと温かい寝床で季節の巡りを待っていることだろう。
    会いたい、ただ一つの小さな想いをこの風がかの人の元へ届けてくれるのならば、きっと会えなくとも互いの想いを知り幸せな気分に浸れるものを。
    そんなことを思いながら少年は山を降りるべく歩を進めた。

    寂れた小屋はあちらこちらが穴だらけでおよそ人が住む場所とは思えない状態であったが、そこがこの少年の住処である。引き戸に手をかけると歪な音をたてながら戸が開いた。その音とほぼ同時に小屋の隅の方で布ずれの音と共に何かが動く。
    それは古布をまとった嗄れた老婆で、息は浅く、まともに栄養が取れていないことが明白な程、痩せこけていた。ゆっくりと身を起こした老婆がちらりと戸を開けた少年の方に視線をやる。眼窩の中に落ち窪んだ眼は暗く濁り、酷く卑しい光を宿していた。
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